第十二週:チェスと木星(月曜日)
さて。
『神』だか『ア・ラー』だか『あがめられる存在』だかは知らないが、そのような方々がたかだか11才になったばかりの男の子に語り掛ける (歌い掛ける)などと言うと、「そんなバカな話があるか!!」と、口角泡飛ばしつつ悲憤慷慨される信仰心の篤い方もおられるかとは想うが、実は、『神』だか『パチャカマック』だか『1969年以降在庫切れのままのスピリット』だかな方々が我々凡夫凡俗に語り掛けたり話し掛けたり歌い掛けたり時には力と勇気と努力と友情と勝利を授けたりすると云うことは、つい5~6千年前までは普通にあったことのようである。
そう。
それは例えば、ホスタージの『オブシディエイア』で言えば、主人公の少女に碧き瞳持つ賢人の居場所を教えた海人の男性にはナイエテ女神が乗り移っていたし、同じホスタージの『ナホトセット』では勇者ブラディオスに乗り移った女神ロウディがナホトセット城下で一騎当千の働きを見せるシーンなんかも見ることが出来たりする。
*
「でも、それも結局は作り話なんでしょ?」と、幼なじみのシャ=エリシャが言い、
「でも実際、作り話かどうかも分からないんだろ?」と、ナビ=フェテス少年は返した。「それに実際、僕的には「本当の話だよ」って言われた方が納得がいく」
「そりゃ、あなたはそうかも知れないけど」
「エリシャだって信じてはくれてるだろ?」
「それはそうだけど――」
「それに実際、“あの人”の言うとおりにした方が上手く行くことだってあるんだ」
「男の人同士がキスしたんでしょ?」と、きれいな細い眉をひそめながらエリシャが言い、
「まあ、」と、困った顔でフェテス少年は答えた。「もちろん、僕からは隠れてたけどね」
「で、それが“あの人”のさせたかったことなの?」
(続く)