第十一週:預言とパンケーキ(土曜日)
「“落ち損なうのは偶然”?――いまアンタそう言った?」
ええ、本に書いてある通り。“『落ち損なう』のは、あくまでも偶然でなければならず、皆これを勘違いしている。”
「これから飛ぼうって時に?」
……って書いてありますね。“意図的に『落ち損なう』のは無理・無茶・無謀と云うものである。”……スゴイ文章だな。
「ごめん、ちょっと本見せて」
はい、どうぞ。だから、『銀河相乗り指南書』なんてB級出版社が金儲けのために――、
「ほんとにそう書いてあるな――」
でしょ?
「“半分落ち掛けたところで突然、他のことに気を取られないといけない。”」
そんなこと言われてもどうやれってんでしょうね?
「“それは例えば、大変魅力的な異性 (若しくは同性)の素敵なスカートが風でめくれ上がるとか――、”」
ああ、なるほど。
「“落ちて行くのとは反対の場所から大きな爆発音がしただとか――、”」
それは物騒ですね。
「“とびきり希少なオオグロセンダンヨツバノアゲハが目の前を横切ったりすることを意味する。”――無茶言ってんな」
と云うか、そんな偶然がないと飛べないなら、あんま役に立たないんじゃないですか?
「“もちろん、そんな偶然に出会える人もそうそういるワケではないので、実際問題、頻繁に空を飛んでいる種族の中には、そーゆー偶然に出会わなくても意識して偶然的に『落ち損なう』者たちもいる。”」
なら、そっちの例を先に挙げれば良いのに。
「“特に 《サカタッティ》や 《ジバレー》等の種族はこの『落ち損なう』を意識的且つ偶然的に行って――”……って、なに???」
(続く)