第一週:白い袖と金色の冠(火曜日)
三世の父コンスタンティウス四世とその第三夫人ファウスティナの間には長らく子が出来なかった。
その為、意地の悪い史家の中には彼らの不仲を殊更に言い募る方々もおられるようだが、それは一重に――西銀河の読者の皆さまにはテレビや映画やミュージカルでお馴染みの――当時西銀河を騒がせた彼らのロマンスへの反発と、後述する三世出生にまつわるある伝説を穿ち見て曲解されたものであろう。
では、その伝説とは何か?
――それは、ファウスティナがある日、伴の侍女数名と惑星 《シャン・ディ》に逍遥した時の話である。
ご存知のとおり、惑星 《シャン・ディ》と言えば、古の巨人族 《泰坦》が住処としたことでも知られ、彼の巨人たちがこの宇宙から消滅し数千年が過ぎた現在でも、文字通りその足跡は至るところに残されている。
そんな 《シャン・ディ》にあって、この日ファウスティナ一行が目指したのは、片目の大巨人デュヤンが残したとされる右の足跡――であったのだが、その途上、侍女の一人が、つい先日の下見の際にはなかったはずの、新しい巨人の足跡を見付けた。
もちろん、《泰坦》族は既にこの宇宙になく、残る二つの巨人族 《冰霜》 《歌利亞》の居留地は遠く東銀河の果てである。
『何故、こんなところに?』と、ファウスティナは――多分に好奇心から――その深さ2mはあろうかと云う穴の底へと降りて行った。
と同時に、天地に急激な闇が拡がり、辺りを激しい雷電が襲った。ファウスティナはその場に昏倒し、そうして、神に会った夢を見た。
『ファウスティナ様!』と、侍女たちが彼女を揺り起こすと、彼女は、既に自身が身ごもっていることに気付いた。
それから一年と二週間と三日後に男の赤子が生まれたが、皇室の占い師はこれを不吉なこととし、その子を棄てるよう彼女に伝えた。
(続く)