第十週:マントとエプロン(水曜日)
はい。
それでは、今日は先ずはお便りの紹介から (前にもやったね)。
『拝啓。樫山泰士様。いつも楽しくお話拝見させて頂いております』
お、丁寧な文章。ありがとうございます。
『実は、今週月曜日のお話を読んでいて疑問に想うことがあり、失礼とは想いつつも、筆を取らせて頂きました』
はいはい、無問題ですよ、なんでしょう?
『ボックスから吐き出された博士の放物運動を計算された際、「到達高度はビルの二階程度、到達距離はボックスから22~23mほど」と云う結果に対し、「全然どうと云うことのない距離と高さだ」とされていましたが、落下地点には診療所もあり、流石の博士も無事ではいられないのではないでしょうか?』
あー、はいはい。
これには実はまだお見せしていない道具が絡んでおりましてね……、
*
『ジャージを羽織ろうとして正解でしたね』と、見事な放物運動を描きながら博士は想った。『――今回はエプロンがあります』
すると彼女は、ジャージの右ポケットから覗いているパーセルヒドラドシルフシチョウ調の朱色をしたエプロンを取り出すと、“彼女”に向け「トゥエ」と、声を掛けた。
すると、エプロンの“彼女”は、ドクター・ス〇レ〇ジの浮遊マントよろしく、診療所の窓に激突直前の博士をフワリ。と包み込んで減速させると、そのまま優しく地面に着地
……させようとしたところで、診療所の窓が
バタン。と開き、まだちょっとだけ見えていた博士の頭頂部に
ゴッチン。と、ぶつかった。
『イテ!』
と、博士は声にならない声を上げたが、驚いたのは窓を開けたシャーリー・ウェイワードも同じである。
ぶつけた (飛んで来た?)相手がどうも人間らしいことに気付くと彼女は、
「大丈夫ですか?!」と、窓を飛び越え、その人影に近付いて行った。
(続く)




