第十週:マントとエプロン(火曜日)
さて。
我々のような哺乳動物に関わらず大抵の有性生殖種においては、雄よりも雌の方が肉体的にも精神的にも勝ると云うのは、銀河の至るところで見られる事実のようである。
なので、まあ、そんなこんなもあってなのか、我々人類及びヒューマノイドの雌――と書くと色々と不都合もあるので“女性”と書くが――においては、特にその身体形成期、所謂 《思春期》と呼ばれる時期にその強さを存分に発揮するように出来ているようなのである――主にその同年代の男子に対してね。
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「なんでシャーリーを殴ったりなんかしたのよ!!」と、女友だちAが言い、
「シャーリー泣いてたわよ(見てないけど)」と、別の女友だちBが続けた。
すると、その様子を後ろから見ていた女友だちCが、
「あそこはアンタが負けてあげるべきよ?」と、小さな子供でもたしなめるように言い、
「どうせ斬られてもここの診療所で治して貰えるんだからさ」と、他の女友だちDが続けた。「――なんで斬られてあげなかったの?」
彼女たちのこの言に対して、
『決闘を申し込んだのはアイツだ!!』とか、
『あんな剣で斬られたら死ぬだろ?!』とか、
『拳を交わさないと、剣を交えないと、分かり合えないこともあるんだよ!!』とか、
そーゆー少年ジャ〇プ的思考と云うか弁解がフラウスの脳裏を過ぎらなかったワケでもないのだが、もし仮にそんな言葉を口走ってしまおうものならば、更なる十字砲火が後ろに控える女友だちE~Lからも発せられるであろうことは火を見るよりも明らかである。
そこで、これらの言葉に対してフラウスは、一言の弁解も反論もせず、ただただ申し訳なさそうな笑みを浮かべると診療所の中へと入って行った――
今はただ、シャーリーに会うことが何より優先されると考えたからである。
(続く)