第十週:マントとエプロン(月曜日)
さて。
既にお気づきの方も多いかと想うが、博士たちの乗っている 《タイムボックス》は、第一部で登場したMr.Blu‐Oのポッドの量産型――と云うかパクリ、模造品である。
ただまあ模造品と言ってもそこはそれ、TP技術部の歴代技師が「あーでもない、こーでもない」と微に入り細を穿ってパクった模造品であり、その性能たるやジムと云うよりジムⅢ……いや、ジムⅡとМkーⅡの間ぐらいのレベルにはあったりなかったりする。
するのだが、それはつまり、本家の問題点もキチンとシッカリ継承していると云う意味でもあって、その最たる問題点の一つは「記憶も意思も心もある」――と云う点であろう。
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カーッ。
と云う薄気味悪い音がして、その“記憶も意思も心もある”ボックスがその主人――ヨレヨレのランニングに使い古したパンツ姿の博士を、
ペッ。
と吐き出した。
「…………なんで?」
と、空を飛びながら博士は、いつまで経っても分からないタイムボックスの思考回路に想いを馳せようとしたが、それより何より問題は「このまま落ちても大丈夫か?」と云うところであろう。
ここがどこの惑星かは知らないが、その重力加速度を博士の故郷 (地球)と同程度だと考えて、撃ち出された時の角度と初速度が大体45度の約15m/秒だったので、それに博士の体重が (*検閲ガ入リマシタ)kgで、空気抵抗は無視するとして…………、
到達高度はビルの二階程度、到達距離はボックスから22~23mほど先と云うことになる。
うん。
この前のスカイダイビングに比べれば全然どうと云うことのない距離と高さだ。
『ですから、私の体重関係ないですよね?』
で、まあ、全然どうと云うことのない距離と高さなのだが、それはさておき困るのは、その到達地点が件のシャーリー・ウェイワードの居る診療所……と云う点であった。
(続く)