第八週:岩と笑い(土曜日)
え?「他の種族から言われて気付いた」ってどう云う意味ですか?
「どう云う意味って?」
だって、「行きたくなったところ」に行くための最短ルートを通るんでしょ?
「そうだよ」
だったら、元々はそう云うことを考えながら飛んでたんじゃないですか?
「うん。そうだよな」
……うん?……いえ、ですから、そもそも「考えながら飛んでた」んなら、「言われて気付いた」っておかしくないですか?
「…………あれ?」
と云うか、今はどうやって――と云うか何を考えて飛んでいるんですか?
「え?…………ちょ、ちょっと待ってな………………ごめん。ちょっと飛んで来ていい?」
え?
「なんか、こう、オレ、本当に飛べるのか自信なくなって来た」
いやいやいやいやいやいや、だって光でしょ?自信も何もありのままに飛べば――、
「だよなあ…………でも、ゴメン。ちょおっと確かめて来るよ」
はあ……、
「うん。すぐ戻るから、うん。アンタは仕事の続きでもしてて」
はあ……大丈夫ですか?
「いや、大丈夫だとは想……いや、取り敢えず外に行ってみるよ」
はあ……じゃ、まあ、お気を付けて。
「……うん」
大丈夫かなあ……まあ、心配しても仕方ないんだろうけど、スランプみたいなもんかも知れないなあ…………いや、でもこれ他人事じゃないかも知れないよなあ、僕だってこうやって当り前のように文章書いているけど、ある日突然……あ、戻って来た。どうでした?
「…………どうしよ?飛び方忘れたみてえ」
(続く)