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はじめに

     *


“西からの強き風


 天翔ける八重棚の雲


 宙は限りなくつづき


 威は天地陰陽に達す


 かつて賢臣を得


 そして故郷へと帰る


 結は山よりもつよく


 そして四方を護らん”


     *


 さて。右の詩は、 統一西銀河帝国皇帝ランベルト三世が、ジン=ブ討伐後の帰都の折り、故郷の――と言って良いだろう――惑星 《ディアン=スウ》の宴席にて作られたとされる詩であり、西銀河出身の方なら誰しも一度は耳に、或いは目にしたことのある、名にし負う名詩……とされている詩である。


 まあ、筆者個人の見解としては――我が翻訳の拙さはさておき――巷間言われるほどの名詩とは想えないのだが、それでもやはり、かの三世皇帝の事績を想い出しつつこの詩を読み歌うたびに、ある種の感慨が引き起こされるのも、またひとつの事実ではある。


 だが、まあ、しかし、詩の出来不出来と云う面においては彼の友人であり宿敵でもあった…………と、いやいや、話を急ぎ過ぎるのが私の悪い面であるし、ここでこの詩をご紹介したのは、この詩に対する私の個人的見解を述べるためでもなかった。


 そう。


 今回、本編第二部開始に当り、この詩を冒頭に置いたのは、この詩に歌われる「四方を護らん」とする「賢臣」が、通常言われる『ランベルトの四騎士』ではなく――だけではなく、彼がその少年時代に共に旅した四人の仲間についても歌っているのではないか?…………と云うことを伝えたかったからである。


 つまり。


 今回私は、彼ら彼女ら四人の旅の仲間と、統一西銀河帝国皇帝でもあったランベルト三世――フラウス・プラキディウス・ランベルトの旅の物語をここに書き綴ろうとしているワケである。


 もちろん。


 この試みは、ほぼまったくと言って良いほど謎に包まれた――それはつまり、資料も史料もほとんど存在していないと云う意味だが――そんなランベルト三世の少年期を描かんとする我ながら全く身のほどを知らない愚挙であり、私のような一書生の手に負えるとは想えない暴挙でもあるのだが…………いやいや、こんな所で止まっていてはいけない。きっと、私の敬愛する或る賢人ならば、「そないなもん、やってみんと分からへんやろ、アホか」と言うところであろう。


 だが、まあ、しかし、いずれにせよ、資料も史料も乏しい状態での創作と云うのは、根が史学者の私の本分でも領分でもないのは偽らざる事実である。


 であるからして、賢明なる読者諸姉諸兄におかれましては、この旨お忘れなきよう、この無謀な無学者が大いにすっころび倒れ伏し燃え尽きた暁には、せめて灰ばかりは集めて頂きたい――と、こう願う次第である。


 さあ、それでは、いつもの如く前置きが長くなったが、シエンヤイに住まい給う女神らよ、今こそわたくしに語り給え――御身らは神にましまし、事あるごとに、物あるごとに、すべての場にも居ましまし、なにごとすべてを知り給えるのに、われらはただただ伝え聞くのみ、なにごとひとつも弁えられぬものなれば――わたくしにあの少年と、少年の賢明かつ懸命であり続けた友人たちについての物語を!ぜひとも語り給え!



(続く)

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