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第七週:十六夜月と一身上の都合(月曜日)

「汝に決闘を申し込む!!」


 さて。


 この時この場所この場面でのシャーリー・ウェイワードについて、前述の童話作家は次の様に書き残している。


『空には、彼女の心情などにはまるで無関心であろう十六夜の月が上り、少女は少女で、壇上の少年を見詰めるのに忙しく、その月を眺める余裕などはなかった。しかし、それでも私には、この両者が、何とも親し気に寄り添っているように想えた。』


     *


「決闘?」と、手にしたマルテンサイトの大剣をザン。と舞台の床に刺しつつフラウスが訊き返した。「――酒でも飲んだのかよ?」


 すると、彼のこの答え方に一方ならぬ憤りを感じたのだろう少女は、鞘に入れ置いたままのもう一方の大剣を引き抜くと、「わたしは――」と言って槍投げの槍のように構えた。


 そうして、事を察した里人たちが道を割るのに合せるように、「お前のそう云うところが――」と言いながら、今度はほぼ水平方向に、その大剣を投げ打った。「許せんのだ!!」


 シュッ。


 と、長さ1.4m、重さおよそ7~8kgはあろうかと云う大剣が、速度を増しつつフラウスを襲う――が、今度も彼は「ほぼ無音に」その柄をつかむと、その勢いに逆らわぬよう、その勢いが失われるまで、舞台の上で、舞って舞った。


 この日の彼は、彼の祖母が男用に仕立て直してくれたと云う母の舞台衣装――かつての小春に、悲嘆に暮れるルリュイセスの舞いを舞ったあの舞台衣装――を着ていたのだが、そのせいもあってだろうか、シャーリーの想いと憤りを受けた彼のその舞いは、まるで、歴史の泥中より咲き出でた小さな白き花のようであった。


 ザン。


 と、二本目の大剣が舞台の床に突き刺さり、少年は「許せないってどう云う意味だよ?!」と、少女に向け叫んだ。



(続く)

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