第六週:仔馬と大剣(木曜日)
さて。
第一部のフェロモン王子の段でも少し触れたが、この銀河の暗黒時代――謎と暴力に満ちた 《優性戦争の時代》の名残りと云うようなものは、今現在のこの銀河でも至るところで目にすることが出来る。
が、とは言っても、あの白ジャージのような素っ頓狂な力は本当に本物の希少種なので放っておくとして、やはり、メジャーで分かり易く一般の方々も親しみや憧れを抱きやすいのは何と言っても 《騎士》の力であろう。
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ピー、ガガガ。と云う使い古しのマイク特有の嫌な音がして、『えー、それでは、』と言う里長の声が広場に響き渡った。
踊り足りない里人たちは不平を言いつつ、それでも踊りを止め、奏で足りない楽人たちも不満を言いつつ、それでも杯を廻した。
『踊り足りない、歌い足りない、飲みが足りない皆さんの、お気持ち重々お察ししますが、しかしそれでは、祭りの口実・言い訳・大義名分立ちません!』
――正直だね、この人。
『えーっ、と言うことで、議事の次第に従って……先ずはなんだっけ?』と、里長が訊き、
「旅立つ若人」と、小声の会計係が補足した。
『そうそう。えー、この春、この里を立つ若い二人から挨拶を頂こうと想います!――さあ、フラウス・ランベルト!シャーリー・ウェイワード!どうぞ舞台へ!!』
この里長の言葉を受け里人たちは一斉に拍手と歓声を若い二人に投げ掛けたのだが…………どいつもこいつも顔が真っ赤だなあ。
と、そこで先ずは、例の“先生”と踊りまくったせいで顔が真っ赤になった (飲んでないよ)フラウスが舞台へと上がり、里人たちの拍手と歓声に応える。
「踊り足りねえぞ!」と、里人の一人が叫び、
「まだまだ踊るよ!」と、フラウスは返した。
そうして、次にはシャーリー…………の投げた剥き身の大剣が舞台のフラウスを襲った。
(続く)




