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第六週:仔馬と大剣(水曜日)

「フラウス! 踊って!!」


 と、舞台上で素人楽団の一人が叫んだ。彼女は、自身の弾く弦楽器のリズムに乗って来ない幼なじみを見咎めたのである。


 するとフラウスは、周囲を見まわしつつ、「シャーリーを見なかった?」と、逆に彼女に質問をした。


 この問いに対した舞台上の少女は、少し不意を突かれた様子ではあったが、すぐに事情を察すると「今日はまだ見てないわ」と言った。「いいから踊って!どうせすぐ来るわよ」


 そう言ってから彼女は、手にした弦楽器で改めてリズムを刻み出すと、音楽の方へと戻って行った。


「フラウスどうしたって?」と、楽団の一人が彼女に訊き、


「またシャーリーとケンカしたみたい」と、彼女は答えた。


「じゃあ踊らないの?」


「あのバカが踊らないわけないでしょ」


     *


 祭りを見下ろすヒシェの山にイッカクアオアシウマの母馬が一匹。フッと首を高く上げると一声大きく嘶いた。草を食むことに夢中で、傍らの仔馬の消えていることに今更ながらに気付いたのである。


 すると、山の中腹でこの嘶きに気付いた仔馬が一匹、夢中になって彼女の方へと駆け降りて来た。


 そうして再会した母子の馬は、暫くの間、ゴムまりでも弾ますかのように一つところで飛び跳ねていたが、急にそれを止めると、まるで何事もなかったかのように首を垂れ、再び草を食み始めた。


 と、そんな母子の横を、真剣な面持ちの少女が一人、両手に何か長いものを持ち山腹を駆け降りて行った。


 その身に纏うは浅黄の模様も鮮やかな、朽ち葉色した革鎧、輝く蒼き瞳持つ、その名はシャーリー・ウェイワード――であった。



(続く)

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