表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/331

第六週:仔馬と大剣(火曜日)

「ぎ」と、サン=ギゼが言い、


「皇帝は関係ない。偶然に偶然が重なったまでじゃ」と、“先生”が応えた。


「お」


「じゃから、武術の“ぶ”の字も教えてはおらんよ。踊りだけじゃ」


「し」


「もちろん、基礎は我らが歩法と体捌きじゃからそれなりの訓練にはなろうが、それを言い出したら、お前らのところは踊りも歌も下手くそな奴らばかりじゃろうが」


「で」


「じゃからアイツは拳も脚も組みも器術も擒拿も何も知らんよ。そんなことをしたら、ワシがあのバアさんに殺される」


「む」


「戦バカのお主らには分からんかも知れんがの、この世の中には戦以外にも身体を動かす術はあるものよ。どうじゃ、踊ってみるか?」


 するとここでギゼは、「い」と言ったまま顔を赤らめて黙ってしまった。


「ほっほっほ」そんな彼の様子に“先生”は笑うと、「よいよい。祭りの楽しみは他にもあるて――」と言って、持っていた杖でギゼの尻を叩いたが、なるほど、ギゼほどの手練れをしても避けれらない太刀筋であった。


     *


 カカンカン、カカンカン、カン!………


 カカンカン、カカンカン、カン!………


 と、先ずは舞台中央の三人の女性が各々二本の木片を打ち鳴らし、それに続くように、


 ンッダダ、ッダ、ンッダダ、ッダ、


 ンッダダ、ッダ、ンッダダ、ッダ、


 と、舞台四隅の男衆が肩に担いだ大振りの太鼓――形はメルトスの鼓によく似ている――を威勢良く叩き始めた。


 空には地球で言う十六夜月が見え始め、里人たちは口々に歌い踊り、里の素人楽団がそこに音を乗せて行く―― 《ション=ロォン祭》の始まりであった。



(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ