表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/331

第六週:仔馬と大剣(月曜日)

『この年のチョアン=リーの春祭りは、近年まれにみる晴天に恵まれた』


 と、この土地の風土記には残されている。


『空気は澄み切り、まるで水のように里の通りや広場の中を流れ、街頭たちはみなレシャンモミやチャナンナラ、それにウーシャンプの枝で包まれ、本当にそこいら中が海の底の都のように見えた――』


 と、こちらは、その夜その場に偶然居合わせた旅の童話作家の日誌からだが、なるほど、まるで夢かおとぎ話の中のような一夜だったことが、この作家の筆致からも伺えるが、では、この夜の 《ション=ロォン祭》で一体何があったのだろうか?


     *


「先生!」と、右手を目一杯伸ばして振りながらフラウスが叫んだ。


 すると、呼ばれた“先生”――と云うか、身長70cmほどのその生物は、フラウスの方を振り向くと「おおっ」と一声言うが早いか、質素な衣服を纏わせたその緑の身体をピョン。と、ボールのように弾ませ、祭り舞台の上からフラウスの所まで――10mはあるだろうその距離を――軽々と飛び越えて来た。


「元気にしておったか、小僧」と、着地と同時に“先生”は訊き、「もちろんですよ!」と、フラウスは返した。


「鍛錬は怠っていないじゃろうの?」


「もちろん!毎日やってますよ」


「では後で腕前を見てやろう!」と、ここまで言ったところで“先生”は、フラウスの背後に立つ大きな人影に気付くと、「――ほお、変わったヤツがおるの」と、言って笑った。


「あ、そうだ、紹介するね、こちらサン=ギゼさん。帝都まで一緒に来てくれるんだって」


 と、先ずは“先生”に向ってフラウスは言い、次に、


「で、こっちが僕の踊りの師匠で、與田先生。本当は礼の先生なんだけど、踊りもヤッバいんだ!」


 と、ギゼに向って言った。



(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ