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新年SP:愛と勘違い(木曜日)

 星団歴4227年。


 惑星シャン・ディ。さる巨人族の足跡の中。


 天地に急激な闇が拡がり、辺りを激しい雷電が襲い、ファウスティナはその場に昏倒し、そうして、神に会った夢を見た。


 ――と、後年彼女は述懐している。


 ――が、この時彼女が会ったのは一羽の鳳であり、彼はある少年の魂でもあった。


     *


「ロンくーん、シズカよーー」


 と、《ソディム》の廃墟にロクショア・シズカの叫ぶ声が聞こえた。


 がしかし、そこは元々の廃墟に加え、先刻イグ=バリ放った『LOUD・H』に因って瓦礫も塵も消え失せてしまった一角である。彼女の叫びに応える声はもちろん、その声が周囲に響くこともなかった。


「おい、こら、バリ、目ぇ覚ませ」


 と、こちらでは瀕死状態――と呼ぶには語弊があるが――地面に突っ伏した状態の“イグ=バリ”をギゼが起こそうとしているところだが――、


「なんであの子らぁと戦っとったんか聴きたいんじゃが……アカン。まったく反応がない」


「ダメですか?」と、シズカ。


「ああ、こいつじゃろ?お前を襲ったんは?」


「ええ。ロン君にも酷い傷を」


「見事なまでにやられとる…………が、なんぞ安心した顔もしとるの」


 と、ここでシズカは、このギゼの“安心”と云う言葉に、一種独特の奇妙な印象を抱いたのだが、その意を彼に問うより早く、自分たちの頭上に起こり始めているある異常に気付いた。


 ――星々の消失と宇宙の収縮である。


     *


『で、その“クラック”を消す……と云うか“発生しなかった”ことにしたいんだけど――』


 と、その氷種黒曜石の瞳をフラウスに近付けながら“エル”が言い、


『先ほどもお話した通り、“穴”も“裂け目”もあらゆる宇宙のあらゆる時間と空間に存在しています』


 と“少年”が後を続けた。あまり執着は持たないで頂きたいのだが――、


『そこで“再起動”――宇宙が枝分かれをするより前、“あらゆる宇宙が始まる以前”にまで宇宙を遡らせます』


『そう――』


 と、執着を忘れるためだろうか、フラウスの顔から顔を離しながら“エル”。


『なんだけど、一つ問題があってね――』


     *


 ゴオォン、ゴオォン。


 と云う奇妙な音が遠く頭の奥から響いて来て、


 ハッ。


 と、シャーリー・ウェイワードは目を覚ました。


 そうして直後――、


 ゴオォン、ゴオォン。


 と云う奇妙な音が今度は身体の右側から聞こえて来て、


 そこで彼女は、こちらを見詰めるロン=リクショア=カイの視線に気が付いた。


「ここは――」


 と、周囲に目印となるものが何もない、星の欠片すらも見えない暗闇に戸惑いつつ少女は、傍らの少年にそう問うと、彼の手をつかもうとしたのだが、直後、その左腕は別の場所に置いてけぼりにされていたのだと云うことを想い出し手を引いた。


 が、しかし、それでも少年は、


「し……ずか……に」


 と、いまだ慣れぬ自身の口でこう彼女に伝えた。


「だ……れか……はな……し……てい……います」


     *


「私達が呼ばれる?」


 そうエリシャが訊くと、


「《最大剋星龍捲風》って例のバカでかいソニックのこと?」


 と、フェテスも訊き、


「何処に?」


 と、またエリシャが訊くと、


「と云うか実際、オジさん誰なの?」


 と、またフェテスが訊いた。


「そうそう。何で二人いるの?」


「て云うか、顔真っ赤だけで酔ってるの?」


「そもそもココって何処なの?」


「なんでオートマータは止まったの?」


「宙には星も月も見えないけどなんで?」


「いや、堕ちて来そうな惑星ならあるけど」


「近過ぎて現実感ないし、あれ何なの?」


 と、まあパンクしショートしていた頭が大人に出会った安心感 (安心感?)から改めて動き出したのだから仕方ないが、二人は想い付くままに想い付いた疑問を想い付いたようにス・イゲイへと投げ掛け続けていた。


 で、まあ、例の“詩の蜜酒”をたっぷり飲んで“飲めば詩人や学者になり”状態の今のイゲイならば、彼らの雪崩の如き質問にも的確に答えられたのだろうが、いまはそんなことをしている余裕はない


 ――なので、


「迷わず行けよ?」


 と、まるで何処かのプロレスラーの如くに言った。


「行けば分かるさ」


 ――君らは彼の友人だったな?


 直後――、


     *


 グォォォオン。


 グォォォオン。


 と云う奇妙で不愉快な音が何処からともなく聞こえて来て、二人を惑星 《ハドルツ》からまた別の場所へと移動させた。



(続く)

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