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クリスマスSP:フラウスとフラウス(水曜日)

 三世大帝は舞と楽とを好み、政務の手が空くと、必ずと言って良いほどシ=ジャウ東部の楽師街を訪れては音楽談議に花を咲かせ、最後には自ら舞を舞って見せたのだと云う。


 ここの楽師たちは三世が舞を舞っていると、その上にいつも凰がわだかまっているのを見て不思議に想った。


 そうして、三世が楽師街に来る際は決まって数刻居つづけたのだが、この間は不思議と彼らの下に他の客があることはなかった。


 それから、凰がわだかまる不思議を見た楽師達は、年の瀬になると必ず、三世と彼の凰のための曲を新たに作り奏したのだと云う。


     *


「盗んだ?」


 と、加齢による自身の耳の不調を疑いながら皇帝は訊き返した。


「惑星を?」


『上を見てみろよ』


 自分でも馬鹿なことを言っているな……、と想いつつ葉来。


『惑星に衛星、異様に近いとは想わないか?』


「……言われてみれば、そんな気もするが」


 ――宙を見上げる事も最近はめっきり減った。


『すべて、盗んで来たんだそうだ』


 ――本当に馬鹿げた話だがな。


「すべて?」


『まあ、どれもこれも動物は居ないらしいけどな――この惑星なんかは、本当は植物も燃えて無くなっているハズだったそうだが、急激な突然変異が繰り返されて……この通り』


「それは、本当の話なのか?」


『さあ?俺も又聞きだしな……それより』


「どうした?」


『あそこ――動物は居ないはずなのに“くっつき虫”たちがくっつき回った跡がある。――アンタのお孫さんかもな』


「確かに道が出来てるな……フラウスにしては少し大きい気も……なあ?」


『なんだ?』


「“くっつき虫”とは何のことだ?」


     *


「どうですかー?」


 と、三十八体目の異形の神像――こちらは我が惑星で云う蛸のような頭に大きな渦巻き型の赤い耳を持ち、その十六本の手足にはこちらも蛸のような吸盤が付いている――の下からロクショア・シズカは叫んだ。


 彼女が問い掛けた相手――サン=ギゼは、その10m近い神像の肩の上に立ち、天井に少しく見えた通風孔のようなモノから外に出られないかと調べているところである。


「おー、なんぞ風が吹いて来ちょるわーー」


 と、ギゼ。


「虫か何かの鳴く声も聞こえるし外には繋がっていそうじゃのおーー」


「孔の大きさはーー?」


「先の方までは分からんが、ワシでも十分通れそうじゃーー」


 と、下方にいるシズカの方に向き直りながらギゼ。


「――上がって来れるかーー?」


 ――と、直後、


 キィィィィーーーーーン。


 と、まるで鍛え上げられたマルテンサイトの大剣同士が擦れ合うような音が通風孔から流れて来た。


「今のは?!」


 と、驚いた声でシズカが訊き、


「どこぞで聞いたことがあるぞ!」


 と、自身の記憶を辿りながらギゼが応える。


「……32年のジルフィド…… 《境界線の舞踏》…………イグ=バリ?」


     *


『じゃあ行くわよ?』


 と、手元の石板を操りながら“シズカ”が言った。


『と言っても同時には無理だけど――どっちから行く?』


 この問いに対してフラウスと小さなキム=アイスオブシディアンは、少しの間顔を見合わせていたが、先ずはアイスが頷き、


「なら、僕から」


 と、フラウスが“シズカ”に答えた。


 それから少年は傍らにいる大きなケヤキの木に向け、


「なので、ちょっとの間、アイスくんを見ていて貰える?」


 とお願いをし、ケヤキの木は、


“全然構わんよ。”


 とテレパシッて応えた。


“ただまあ、少年――なるべく死んだりはしないようにな。”



(続く)

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