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第五週:無口と兵士(火曜日)

 シャーリー・ウェイワードの家は先祖代々騎士の家柄であった――とされているが、実際のところ、彼女の祖父ジョナサンも、彼女の父ジョージも生まれ付き身体が弱く、仕官もしなければ戦場に行くこともなかった。


 更に、ジョージにはシャーリーの他に子はなく、「ウェイワードの騎士もこれまでか……」と、周囲の人々は考えていたようである。


     *


「えーっと、それでだ――」と、その黒々と云うかボサボサと云うかした頭の天辺部分をポリポリ掻きながら里長が言った。


「今年の春祭りが終われば、君らも里を出て行くことになるワケだが、あー、そこで、里からちょっとしたお祝いの品を渡すことになった。――で、なんだったっけ?」


「――祭りの席上で」と、会計係が言い、


「そうそう。祭りの席上でその品を渡――祭りには来るよな?」と、里長が訊いた。


 すると訊かれた二人――フラウスとシャーリーは、互いの顔を見もせずに、無言で里長に頷いて見せた。それを見た里長は、


「なら良し」と話を続けつつ、「で、出立の挨拶なり、祝い品への礼なり、私への賛辞でも良いぞ、を、こう……そう言えば、二人はどこに行くんだね?」と、更に質問を重ねた。


 この質問に対して、当の本人たちより先に、


「シャーリーさんは 《ウー=シュウ》の騎士学校へ、フラウスくんは帝都のお母さまのところへ戻られます」と、会計係が答えた。


「おお!それでは、ファウスティナ嬢のところに?!」と、里長。「いやいや、随分とご尊顔を拝見していないが、彼女が里を出て行く時は、この里の男衆だけでなく近隣に住む男衆も全員見送りに来て、皆が涙を――」


 と、何故か昔語りに入って行ってしまう里長であったが、彼が言いたかったのは、要は、里を去る二人に祭りの席で挨拶をして欲しい……と云うことだけのようであった。



(続く)

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