第五十一週:裂け目と繋がり(水曜日)
うん。
で、そんな感じのトウホンセイソウ・ナンセンホクバがあって……、
『なんじゃ?!お主は?』
と、突然目の前に現れた酒臭い禿げ頭の男に向って“守帥・イゲイ”は叫んだ。
すると問われた禿げ頭の男――ス・イゲイは、その自分と同等かそれ以上に酒臭い赤ら顔の男に向って、
「お主こそなんじゃ?!」
と、叫び返した。
『なんじゃとはなんじゃ!訊いたのはこちらが先じゃぞ?!』
――酒臭い息をさせよって。
「訊いたのはお主が先かも知れんが、他人にものを訊ねるのなら、先ずは自分の名を名乗るのが筋じゃろうが」
――頭まで真っ赤になりよって。
『確かにそれはそうかも知れんが、いきなり現れ落ちて来たのはそちらが先』
と、“イゲイ”
『――先ずは非礼を詫びんか』
「何を言うておる。突然現れおって」
と、ス・イゲイ。
「――そっちこそワシに謝れ」
『なに?』
「なんじゃと?」
と、“自分の敵は自分”とはよく言ったもので、何故か互いの事が気に喰わなくてたまらないこの“二人のイゲイ”は、今まさに拳でも交えそうなな勢いであったが――、
「あの、」
と、先ずはエリシャが割って入り、
「実際、どっちもどっちだとは想うけど――」
とフェテスが、“守帥・イゲイ”の方を指しつつ、
「先に居たのはこっちの人だよ」
と、仲裁 (?)をした。
が、しかし――、
『ほうれ見ろ!このつるっ禿げ!』
「なんじゃと?!言うて良いことと悪いことがあろうが!!この丸ごと禿げ!」
と、更に火に油を注ぐ結果とな――直後、
トッ。
と衣擦れのような音がした
――と想う間もなく、二人はそこに倒れてしまった。
「ああ、うるさい」
コクン頭のウォン・フェイであった。
「一人でも煩わしいのに」
(続く)




