第五十一週:裂け目と繋がり(月曜日)
と、まあ、ソンナコンナのナンヤカンヤがあって……、
『ぶっはあ!!』
と、白や黄や桃色の花びらで埋められた桜の森の満開の下から――と云うか、その花びらたちの海の下から――葉来子龍は顔を出すと、
『おい!誰か?!誰かいないか?!』
と、花びらの海を掻き分けながら言った。
すると、これに応えるように、
「葉来か?!」
と、これまた花びらの底から浮かび上が――と云うか、おじいちゃん溺れ掛けてません?――ランベルト大帝が叫んだ。
「すまん!助けてくれ!泳ぎは苦手だ!!」
と、その声のする方に葉来が顔を向けると、なるほど確かに、そこには白や黄や桃色の波の中に沈み掛けている皇帝の長い腕が見える。
『なんだ?泳げねえのか?』
と、葉来が訊き、
「泳げぬことはない!」
と、明らかに溺れ掛けている皇帝は答えた。
「――ただ、苦手なだけだ!!」
……カナヅチの人ってそう云う言い方するよね?
『仕方ねえなあ』
と、花びらの海を掻き分けつつ皇帝の方へと葉来は近付くと、手頃な木を見付け、彼と伴にそこへと避難した。
「一体、ここは何処なのだ?」
と、勇者ブラディオスの腕の如く太く大きく育ったエドヒガンザクラの枝に掴まりながら皇帝が言い、
『多分、目的地で合っているんだろうが――』
と、古の巨人 《泰坦》族と見紛うばかりに生長したオオヤマザクラを上へと登りながら葉来が応えた。
『まさかここに飛ばされるとはな――』
「“ここ”?」と、皇帝。
『俺も来たことはないからハッキリ言えないが』と、葉来。
――昏くて宙がよく見えないしな。
『ここは多分、《地球》って惑星だよ』
「地球?」と、花びらの海から上がりながら皇帝。「――聞いたこともない」
『ああ、動物達が捨てた植物の楽園だそうだ』
(続く)