第五十週:観察と鐘の輪舞(土曜日)
……スさんとウォンさんが消えた??……ごめん。ナツ君分かる?
『あの、私の名前はHA――』
いや、知ってるけど、その名前はここでは使えないからさ――、
『まあ、それは存じておりますが――』
それよりスさんとウォンさんが消えたって皆が言ってるんだけど、本当かな?
『少々お待ち下さい…………お待たせ致しました。ポッド内を隈なく走査しましたが、確かに、お二人の姿はないようです』
……さっきまで居たよね?
『はい。十四分と二十八秒前までは確かにコントロールルーム内にいらっしゃいました』
……何処に行ったのかとか……分かる。
『少々お待ち下さい………………………………………………………………………………』
…………ナツ君?
『……………………………………………………………………………………………………』
……え? なになに? なんか怖いんだけど?
*
ゴオォン、ゴオォン。
ゴオォン、ゴオォン。
と、ここで、遠く遠く遠く離れた“三つの”エンジンが共鳴し合い、
「あれ?」
と、先ずは佐倉八千代が床の微かな振動に気付き、
「……なんか変な感じしない?」
と、次に木花咲希が八千代の方を向いて言い、
「……ここの壁ってこんな色でしたっけ?」
と、坪井西子が元の青色から白とか黄とかに変わったり戻ったりし続けるポッドの壁を見詰めながら言った。
すると坪井のこの言葉に、
「この白色って博士のボックスの――」
と、小張千春が応えようとした瞬間――、
グォォォオン。
グォォォオン。
と云う奇妙で不愉快な音がして、空間と云う空間が急激な縮小を始めた。
(続く)




