インターミッション:幕間(その1)
ブブブ。
グオン。
シュン。
さて。
西暦2019年4月25日。木曜日。12時25分。
地球。日本。東京都練馬区石神井公園。
くつろぎ広場――の、とある東屋。
「すみません。お待たせしました」
と、一見デヴィッド・ボウイっぽい格好の白ボーダーに黒パーカーを羽織った女性が、このお話のスタッフに声を掛けた。
「12時前には署を出たんですけど、お弁当屋さんが想いのほか混んでて――あ、すみません。お昼食べながらでも良いですか?」
そう言うと彼女は、手にしたビニール袋――石神井公園徒歩三分の好立地で商売繁盛ササ持って来い的絶賛営業中の大人気弁当店『カズちゃん弁当』の「ミックス魚フライ弁当」をスタッフに見せながら、
「最初は終わってから食べようと想ってたんですけど、14時から急な会議が入っちゃって、遅れるとまた新津さんがうるさいんですよね――」
と、続けた。
彼女からのこの提案に対して、このお話のスタッフは快諾すると、事前に送った小説は読んでくれたか?と、この若い女性――石神井警察署勤務の小張千春 (26)に訊ねた。
「ええ。クッソ長かったですけど、まあ読みやすくはあったんで、仕事の合間合間に読ませて――と云うか、あの女の子ってタイムパトロールのオブシビダン博士ですよね? ……ああ、やっぱり。 名前が微妙に違う……え?“アイスオブシディアン”が正解。“オブシビダン”は博士の曾々々祖父の名前?でも前に博士が直接――。 ……あれは博士のテキストメッセージに誤記があった? ――でも、実際…………あー、タイムヘルメットの読み上げ機能が誤記をそのまま読み上げちゃったんですね、なるほど。 あ、そう云えば、あの“貧相な顔した男の人”って桜台の樫山さんとは…………別人?ですよね。 遠い親戚?……かどうかは、オリンピックのゴタゴタで戸籍関係の資料がバラバラになって分らなかった、なるほど。 そう云えば、今日は樫山さん――桜台の方のおじさまは?……来ない?代わりにキレイどころを呼んでいる? へー…………いま、何気に私のことディスりました?」
*
「すみません。遅れちゃって――」
と、そこに、男物のキャップにロング丈のパーカー、下はデニムのショートパンツと云った格好の少女 (高校生ぐらい?)がやって来て東屋の二人に声を掛けた。
「12時前には家を出たんですけど、出る直前に友だちとの約束を想い出しちゃって、そしたらその子が「一緒に行く」って付いて来ちゃったんですけど――良いですよね?」
そう言うと彼女は、後ろの方で待っている女友だち――こちらも高校生ぐらいだろうか?長い黒髪を三つに編み紺のロングスカートに同じ色のカーディガンを合わせている――を彼らに紹介した。
この提案に対して、こちらのスタッフも――小張千春に確認を取った上で――快諾すると、事前に送った二本の小説は読んでくれたか?と、この少女――某都立高校一年の佐倉八千代 (15)に訊いた。
「二本?」と、横から小張千春が訊くと、スタッフは、佐倉八千代には『アイスとフラウス』とは別に『川崎、生田、1969』と云う小説も送ったのだ、と説明した――後者の小説は、小張には渡していないのである。
「なんでですか?」と、小張が訊き、
「あ、じゃあ、やっぱり、アレ小張さん本人なんですね?」と、八千代が口を挿んだ。
「――どう云うことですか?」
「あ、その『川崎』って方に――あ、ちょっと待って下さいね…………咲希ちゃーん。咲希ちゃんも一緒に話聞いて良いってーー。こっち来て座りなよーー」
(続く)
*彼女たち2人が活躍するお話は、こちら。
「川崎、生田、1969」 https://ncode.syosetu.com/n4345gw/
「エマとシグナレス」 https://ncode.syosetu.com/n8522ha/