第四十九週:鷲鼻とヤシの実(土曜日)
「“スカルスキャパール・ミャーダル”って、日本だと“詩の蜜酒”とか“スットゥングの蜜酒”とか訳されてますけど――」
と、四個目の紫草木草団子を口に入れながら小張千春は言った。
「クヴァシルって神さまが殺された時に、その血と蜂蜜を混ぜて作られたんじゃなかったでしたっけ?」
――何それ、なんか気持ち悪くない?
*
『彼を殺害したのはフィアラルとガラールと呼ばれる二人のドワーフで、彼らがその血と蜂蜜を混ぜて蜜酒を作ったようです』
……そんなお酒がなんでここに?
『さあ、それは分りませんが、過去のMr.Blu‐Oが残した恒星日誌を見るとムジョルニアやストームブレイカーに狙われた記述等もありますので、ひょっとするとアース神族等とも交流があったのかも知れませんね』
そう言えば『悪戯好きの神さんとも仲良うなったことあってね』みたいなこと言ってたな……、その“恒星日誌”とやらにはその辺の顛末は書かれてないの?
『はい、残念ながら。――多分、途中で転生されたのでしょう。この辺で日誌が途切れていまして――』
まあ、今の“あの人”は日誌とか書きそうにないもんね。――で、あのイゲイさんが飲んじゃった“詩の蜜酒”って本物かな?
『さあ?流石に神話に出て来るお酒ですから確かめようもありませんが――もし本物であれば、“飲めば詩人や学者になり”だそうなので、それで分かるかも知れませんね』
…………なんだい?それ?
*
ゴオォン、ゴオォン。
と、ここで、遠く離れた二つのエンジンが共鳴し、
「あれ?」
と、六個目の紫草木草団子を口に入れながら小張千春が言った。
「スさんとウォンさん、いなくなっちゃいました?」
(続く)
 




