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第四十九週:鷲鼻とヤシの実(金曜日)

「“抜け穴”?」


 と、根っからの文系脳で宇宙がどうとか量子重力理論がどうとかマルチバースがどうとか言われてもまったく全然呪文のようにしか聞こえないロクショア・シズカは訊き返した。


「その白くモヤモヤっとした…………なんなんですか?それは?」


 すると、これに対した大鼻大耳の男性は、


「だから、出会うことのない時空と時空がぶつかり合うとそこに時空間の亀裂が生じるんだ。 で、本来なら、そこでエントロピー増大の法則が作用して時空間は復元を始める。 だけど、そこにトリトロンメタジウムの崩壊とチモロコンアの放出が重なると、まあ、確率はそれこそ天文学的数値の何百倍も低いんだが、次元振動のチテトポップスがブラキッてしまうことがあって、そのせいでαがβをκらいながらΘするヒッコスタッタ現象が起きて、そのためそこに小さな“穴”が――」


 と、親切丁寧且つ紳士的&真摯的に応えていたのだが、相手の――と云うか、その場に居合わせた全員の頭の上に巨大な『???』マークを認めたので……、


「要は、迷子になった陛下のお孫さんを探し出すには、この“穴”を通らないといけないってことで」


 と、周囲の皆に分かる言葉を用いることに方針を転換した。


「出来れば姉さんにも来て欲しいって話だよ」


 ――他の筋肉バカよりは子供の受けが良さそうだからな。


     *


『はて?』


 と、“死者の惑星”で少年が呟き、


『どうしました?』


 と、彼の呟きを聞き咎めた“エル”が訊いた。


 ――彼の言葉にいつもとは違う調子を感じ取ったからである。


『ソケットに――』と、返答に注意しながら少年。『新たな反応が表れました』


『反応?』


『はい』


『また誰か来るってこと?』


『ええ、しかも三方向から』


 ――そんなにホイホイ来られる場所ではないハズなのですが。


     *


「なるほど、それは大変興味深い」


 と、ストラディヴァリ製のヴァイオリンをケースに戻しながら、その鷲鼻の男性は言った。


「確かに 《時主》の惑星 《シュールー》と、この 《カーウ》が時空間的に一つながりであると云う話は聞いたことがあったし、“全て物語は、全て実在した”との警句に従い、僕も幾度か検討はしてみたが、いやはやしかし、そこにまさかハチが関係して来るとはね。流石の僕もスッカリ見落としていたみたいだね――どうかな?親愛なるMr.W?」


「ああ、まあ、確かに。君にしては珍しいことかも知れんがね」


 と、問われたトルコ帽の男性が応える。


「それより大事なのは、この小さなレディが君の飼っているハチに興味・関心があるってことさ――君、そうだよな?」


 すると、この問いに対して博士は、


「あ、はい。こちらにオオツタハコバツバメバチの巣があると聞きまして――」


 と、図書館の屋根裏に蝟集する大量の蜂の巣に圧倒されつつ答えた――ストーン女史とMr.Bは蜂に恐れをなして下の階である。


「君、名前は?」


 と、博士の方ににじり寄りながら男性。身体は痩身だが身長は少なくとも6フィートはありそうだ。


「キムです。キム=アイスオブシディアン。職業は――」


 と、博士は続けて言おうとした。


 が、それを遮るように――、


「職業はタイムパトロール。本来は研究職だが元々の性格もあってか現場廻りが多い。出身は地球。ご先祖は韓の人かな?……いや、東アジアの言葉にはトンと疎くて違っていたらすまない」


 と、男性が代わりに続けた。


「え?いや、あの、はい……なんで分ったんですか?」


 と、博士が訊くが早いか男性は、


「いやなに簡単な推理だがね。ただ、これが最も大事な点だろうが――幼い時分に 《時主》の誰かと旅をしているね?」


 と、言った。



(続く)

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