第四十九週:鷲鼻とヤシの実(水曜日)
「聞こえたの?」
と、フェテスの上から身体をどけながらエリシャが言った。
――彼がクッション代わりになってくれたおかげだろうか、あれだけの高さから落ちてケガ一つしていないようだ。
「うん。なんだかすっごく謝ってたよ」
と、こちらは地面に仰向けのままのフェテス。
――こちらの彼も、やはり誰かがクッション代わりにでもなってくれたかのようにケガ一つしていないし痛みもそれほど感じていない。
「それより、これからどうする?」
と、続けてフェテス。
見上げる宙には、先ほどの惑星が、もう一度衝突をやり直すつもりでもあろうか、再び高く上って行っているのが見える。
「どうするもなにも――」
と、自分の身体の様子を確かめながらエリシャ。
「とにかく安全な……出来るだけ安全そうな場所へ」
――うん。本当にケガはないみたい。奇跡ね。
「安全?」
と、フェテス。
「何処かある?」
――あの惑星、また堕ちて来るんだろうなあ。
「取り敢えず、丈夫そうな建物とか」
――は、さっき皆さんが戦ってた辺りよね?
「洞穴とかないかな?」
――大きな山だし。
『オイ……』
――そろそろ気付かないかな?
「山ごと崩れたりしないかしら?」
――なにか言った?
「そしたら何処にいてもダメってことじゃん」
――ううん。洞穴の話だけ。
『コラ……』
――ワシも怒ると怖いんだぞ?
「戦闘も終わったようだし、あっちの人たちに助けを求めてみる?」
「うん……何かみんな怖そうだけどね、実際」
『だから……』
「……ねえ、やっぱり変な声しない?」
「あ!でもイン=ビト王に……声?」
『いい加減背中からどけい!!』
と言ってフェテスを放り投げたのは、二人のせいで半分地面にめり込まされていた 《ウー=シュウの鯨海酔候》こと“守帥・イゲイ”であった。
(続く)




