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第四十八週:オオイチョウと左腕(火曜日)

『また女に護って貰うつもりか?』


 と、嘲りとも憤りとも分らぬ口調でバリが呟く。


 と、同時に――いや、それよりも時間を先行した形で、彼の左足はロンの鼻と口を、右掌はシャーリーの右側頭部を撃っていた。


 ガッ。


 と云う鈍い音がロンの頭部よりし、


 タッ。


 と云う軽い音がシャーリーの右側頭部――ではなく、そこを護った彼女の左掌とバリの右掌で起った。


『はっ!』


 と、右掌に生じた反動にバリは再び喜びの声を上げると、


『やるなあ、嬢ちゃん』


 と呟き、反動を利用して、彼の背後に回ろうとしていた少女の足と首を同時に狙った。


 が、ここでのバリの――彼の身体の誤算は、この蒼眼の少女が彼に戦いを挑んで来ると想い込んでしまったことにあった。


 いや、確かに昨日までのシャーリー・ウェイワードであれば、先ほどバリの短剣を払う時にも使用した木製の小刀を使って戦いを挑んでいたかも知れない。


 が、しかしこの日の彼女――ウォン師匠の演武を見てしまった彼女――遠い宙を飛ぶ朱色の鳥を見てしまった彼女は、彼女の身体は、“戦い”ではなく“生きる事”を選んでいた。


『テリー・ギブ (死なない鋼の糸)』


 左の短剣を右に持ち替えながらバリが無数の蜘蛛糸の如き衝撃波を、少女が居るであろう位置へと放つ。――と、それよりも早く、


『西方烈風!』


 と、声には出さずシャーリーは、先刻目にしたばかりのウォンの型をなぞって舞っていた。


 チチチチッチチチ。


 と、砂粒のように細かな鋼同士がぶつかり合うような音がして、少女の放った烈風がバリの鋼糸の動きを止めた。


 が、所詮は見様見真似の型である。この反動で少女は遠く後方へと弾き飛ばされ、それをバリが追い掛ける。――と、想われた刹那、


「臥鳳蔵凰!」


 と、今度はロン=カイが、彼女に代わり男に向けて型を出した。



(続く)

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