第四十六週:パートとタイマー(月曜日)
さて。
と云うことで、ここで話はフラウスと小さなアイスオブシディアンへと戻る。
「うん? 《地球》と知らずに来たのか?」と、ネオ・シャクジイパークはニューケヤキスクエアの主、通称 《ケヤキのボブ》に鼻で笑われた彼らではあったが、この地にはこの (やたらと人間に敵愾心を持つ)異常な突然変異体以外に意思疎通が図れそうな知性体は見当たらなかったため、(時々腹立たしくはなるものの)取り敢えずは彼と話を続けてみることにした。
――ちょっと聞いてみよう。
*
「じゃあ、この惑星に動物たちはいないってこと?」
と、フラウスが訊くと、
“昔はうるさいほどにいたのだがな、”
と、“うるさい”の部分をやたらと強調しながらボブは答えた。
“ある日突然、犬と猿と雉と亀と蛙がワチャワチャやり出したと想ったら、あのスペースタートルとか云うドデカイ亀たちの背中に乗ってみな出て行ってしまったのだ――あのクソみたいな人間どもも一緒にな。”
「“出て行った?”って……理由は?」
“大銀河なんとかピックとやらから逃げ出すためだったらしいが、あやつら我々植物種のことはスッカリコロッと忘れていたらしく何の連絡も報告もなかったので、詳しいことは全然マッタク知らんのだよ。”
「大銀河なんとか?大銀河グレーテストオリンピックのことかな?――でも400年に一度だから、次はまだ二十年ぐらい先だよ?」
“そんなアホな人間どものタイムスパンのことまでは知らんよ。問題は、我々植物種の力でそのオリンピックの劫火からこの地上を護ったのに、動物種たちが戻って来んことだ。”
「劫火から護った?」
“みなで身体を目一杯伸ばして拡げて、即席のバリアーを作ったのだ。で、その時役に立ったのがその懐中電灯と云うワケだ。”
(続く)




