第四十五週:ヤングと松井(金曜日)
『さあ、まさかの4回を10対0で終っていたこの試合も、日本チームが6回に3点を返し反撃の狼煙を上げて以降は、なんと7回三番落合の満塁本塁打で10対7にまで追い上げ、そうして現在8回裏、二番イチローから2安打、四球、暴投とアメリカチームのサイ・ヤングから2点を更に奪取して…………あ、ここでキャッチャーのジョニー・ベンチがサイ・ヤングの元に向いました!!……が、どうでしょうか?解説のカケフさん。そろそろピッチャー交代ですかね?』
『そうですね。ヤングさんは結果、王さん、長嶋さんとの勝負が出来なかったワケですから、せめて次の松井さんとは勝負をしたいところでしょう。が、彼の後にも古田さんや菊池さんが控えていることを考えると、良くて同点、悪くて逆転なんてことも有り得――』
『あっ、ここでベンチに動きがありました。監督のジョー・トーレがペドロ・マルティネスに指示を出した模様です!!』
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『さて。それではここでストラトフォードのシェイクスピアさんとズームが繋がっております。――どうも、お久しぶりです』
『――お久しぶりです』
『なんでも今日は新作の喜劇についてお話頂けるとかで――』
『そうなんですよ、ラリーさん。実は以前書いた『二人の貴公子』の受けが大変良かったので、またチョーサーの『カンタベリー物語』をネタにジョンと一編書いてみたんですが、そこにキューブリック君から「動画配信に興味は?」と云うオファーが届きまして――』
『それは素晴らしい!『二人の貴公子』は私も二代目吉右衛門とケイリー・グラントのバージョンを舞台で拝見しましたが――』
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「ナア、」
と、Mr.Bが言った。
「アレハ鳥カ?ソレトモ――何テ生キ物ダ?」
なるほど、彼が驚くのも無理はないだろう。
彼の目の前には、青と白のカラーリングが施された丸っこい感じのロボットと、小型の羽毛恐竜アンキオルニスの群れが黒白灰色の羽を広げながら、空を自由に飛びたいなあ……と云う感じに自由に飛んでいたのだから。
「あ、あれは多分――」
と、博士は一瞬返答を試みたが、そこでハタ。と気付くと、
「それって白黒カラーの羽根の方?それとも青と白の丸い方?」
と、Bに訊き返した。
「ウン?アノえさ?オ団子?ミタイナノヲ上ゲテル青色たぬきミタイナ――」
「ああ、ごめんなさい、B」
「ナニ?」
「そっちの名前は出せないのよ」
「ウン?……ジャア、アッチノ河デ蒸気船ヲ運転シテイル黒ト白ノねずみミタイナ――」
「あー、あっちこそダメね」
「ナンダ?ナンデ言ッチャア駄目ナンダナヨ?」
――ト云ウカ、ココハ一体ナンナンダ?
(続く)




