第四週:チャームとナイフ(木曜日)
「じゃあやっぱり、その女が怪しいのよ」と、シャーリー・ウェイワードが言い、
「ですから、それを見極めるためにも問いが必要なのです」と、スチュワート・ヘブンズは応えた。「大切なのは問いなのですから」
「なにそれ、やっぱりぜんぜん分かんない」
「ですから――」と、そこで不意にスチュワートは言葉を切ると、磨いていた食器類の中から一本のナイフを取り上げ、「……このナイフはお嬢さまのものでは?」と、言った。
そのナイフは柄と刃の部分が微妙に歪んでいて――一度曲げてしまったものを無理に戻した跡があって、それを付き付けられたシャーリーは、「あ……でも、分からないでしょ?」と、ナイフから目を逸らしながら言った。
するとスチュワートは、「大事なのは『なぜこのようになったか?』です」と、彼女を窘めるように言った。「――何に使われたのですか?」
*
「……もう終わり?」と、フラウスが訊き、
「……あっけなかったわね?」と、博士が応えた。つないでいた少年との手を離し、ひとり“穴”の方へと近付いて行く。
「大丈夫なの?」と、少年は訊き、
「大丈夫、大丈夫」と、少女は答えた。
それから彼女は、例のグレープフルーツスプーンを“穴”の方へと向けると、チッチキチー。と、その周辺を改めて走査してみたが……、
「――うん。本当に閉じたみたい」
そうして、少女は少年の方を振り返り笑顔とドヤ顔でもしてやろうかと想ったが、その時突然、上空から雨と雪とヒョウとアラレと不定形生物が、彼女の頭上へと一時に舞い、降り、落っこちて来た。
「ドイテドイテドイテドイテドイテ!!」
と、不定形生物Mr.Bは叫び、それを追い掛けるように問題の気象装置と博士のタイムボックスも続いて空から落ちて来たのであった。
(続く)




