第四十四週:結婚式と懐中電灯(金曜日)
「憶えとるところだけでもええから言え!」
と、男が叫び、
「最後の方だけやぞ?!」
と、その父である老王は答えた。
*
「フェテス!フェテス!フェテス!なんであの人たち戦闘中に結婚式挙げてんのよ?!」
「インシェンの人たちの風習なんて知らないよ!って云うかあの花嫁の人も戦士……だね?オートマータをコキュッてやってる」
*
「“海より深く!山より高し!!”」
と、老王の結婚祝詞は続いていたが、
「“ジュ=リェンの壁!ヴァ=イェンの雲!ふたりを護……”――――ダメだ!忘れた!!」
と、ついに寄る年波には勝てない王の記憶力が音を上げると、
「ジジイ!!」
と、問題の花嫁と花婿が同時に叫んだ。
すると、それに応えるように老王も、
「ええい!構わん!…………ふたりとも!――――口づけを交わせ!!」
と、彼らに叫び返していた。
*
「バカなの?バカなの?バカなの?!」
「ちょ、ちょっと、エリシャ落ち着いてよ!」
「だって、オートマータとの戦闘の真っ最中よ?なんで結婚式なんか?!」
「それはそうだけど――」
「宙からは惑星が堕ちようとしてるし!!」
「それも……そうっぽいけどさあ」
「しかも、あの、黒い?――アレって結局なんなの?」
「あの堕ちて来る惑星を止めてるヤツ?」
「そうよ!どうやったら堕ちて来る惑星を止められるって言うのよ?止めてるけど!!」
「……ねえ?」
「このお話考えたひと、頭おかしいんじゃないの?!」
…………悪かったよ。
(続く)




