第四十四週:結婚式と懐中電灯(火曜日)
「それではフラウス――私の孫とフェテス君、それにエリシャ嬢の命を助けてくれたのは貴方でしたか」
「孫?――そんなことは一言も」
「家の事情もあり、ずっと別の惑星に住んでおりましてな――私の名を出し面倒が起きては困るとでも想ったのでしょう」
「言ってくれていれば、まだやりようがあったのだが」
――あまり似ていないな。
「避けていたのでは?」
――母親似でして。
「“ここ”はな。だが、背に腹は代えられんよ、実際、いまこうして話している」
「いつでも頼って下さい」
「貸し借りは作りたくないんだ――アンタらと違って長生だからな」
「では、今回の件も?」
「ああ、手は貸す。手を貸してくれ」
「――変わりませんね」
「魂だからな――あの男か?」
「はい。姓は葉、名は来。“あちら”から来たと言っております」
*
『何か――誰かかしら?見付かった?』
『ええ、ソケットに付いていた痕跡から五……六名?ほどの何者かが我々と同じ“穴”を通ったことが分かりましたが……“ここ”までは辿り着いてはいないようです』
『“穴”に押し戻されたってこと?』
『いいえ、途中で振り落とされた感じですな。元の宇宙に戻った痕跡はありません』
『……つまり?』
『運が良ければ 《ホーライ》内の別の時空に。運が悪ければ……時空間の間に挟まり、その間を漂い続けることになるでしょうな』
『生身で?』
『タイムポッドやタイムベルトが通った風でもありませんから、恐らくは』
『なら、“TPの私”ではないですね?』
『ええ、恐らくもう一人の方かと――』
(続く)




