第四週:チャームとナイフ(水曜日)
「“答えが与えられるのなら、問いは不要だ”」と、執事のスチュワート・ヘブンズが言い、
「なにそれ、あたりまえじゃない」と、その主人……の一人娘のシャーリー・ウェイワードが応えた。「大事なのは答えでしょ?」
「待って下さい。続きがあるのです。“――問いは不要だ。が、それを言うには我々は無知に過ぎる”……分かりますか?」
「なにそれ、ぜんぜん分かんない」
「えー、ですから、“大事なのは答えではなく問いである”と、この詩人?物理学者だったかな?――は、言おうとしているわけです」
「なんで?――みんないつも答えを出させようとするじゃない」
「えー、例えば、その“穴”の例で言いますと、確かに“穴”は塞がりましたが、“穴”を塞ぐことが正解だったかどうかは、その問いを見てみなければ分かりませんよね?」
*
“異物”は博士の想定よりも少なかったらしく――あるいは、フォースフィールドが博士の設計よりも強く張られたらしく、その“異物”たちは、フィールドの中を音もなくウロウロとするばかりで、博士やフラウスへ敵意を向けることはおろか、目の前のフィールドを破ろうとする素振りすら見せなかった。
「あれ?」と、“異物”に向けて構えていたグレープフルーツスプーンを下ろしながら博士が言った。「――なんか大人しいですね」
更に、フィールドの真ん中では“穴”がその姿を拡げ続けていたのだが、それもそろそろ終わりのようである。
「――2mぐらい?」と、拍子の抜けた声で博士が言い、それに合わせるように、今度は“穴”の収縮が始まった。「――あら、けっこう早いんですね」
それから彼女は、“穴”の収縮に合せつつフィールドも収縮させて行くと…………ポシュ。と、見事“穴”の封鎖を成功させた。
(続く)




