第四十二週:パンクとショート(月曜日)
さて。
ずいぶん以前 (第二十九週)にもお話したとおり、この宇宙に“無限”と云うものは存在しない。
その為、この宇宙にあるありとあらゆる物を――と云うかこの宇宙自体を――どんなに圧縮し続けたとしても、それは決して“無限に小さな一点”――“特異点”にはならない。
ただその代わり、この宇宙は“限りなく無限に近い小ささの何か”に圧縮・収縮されることになって、その“何か”は、イン=ビト王が 《最大剋星龍捲風》の講習会で必死になって伝えようとしていたとおり (伝わらなかったけど)、 “無限のギリギリ一歩手前まで熱くなった玉”になる――らしい (私も聞いたが、正直まったく全然意味不明だった)。
ここまではよろしいだろうか?
で、まあ、この“熱くなった玉”のことは、ちょっと一旦横に置いておくとして、重要なのは、
『この世界に“無限の小ささ”と云うものはなく、その代わりに“限りなく無限に近い小ささ”がある』
と、云う点である。
*
「あー、なるほどーー」
と、感心も得心も行ったと云う風な感じでフェテスが言い、
「無限ってそう云うことだったんですね――」
と、爪のさかむけを気にしながらエリシャが言ったので、
『分かってないな――』
と、半ば諦め気味に大耳の男性は想ったが
――それはさておき。
「その“限りなく無限に近い小ささ”を利用したのが、この“抜け穴”だよ」
と言って、目の前に現れた暗くて昏い“穴”を指差した。
「相手の“穴”を利用したコピーだから大きくはないが、私一人ぐらいなら通れるだろう」
――光のアイツなら一緒に行けるかも知れないが、“帰れなくなった時”のこともあるし、こっちに居てもらうか。
(続く)




