第四十一週:自と他(土曜日)
「でも、アイスオブシディアン博士に教えて頂いたトリトロンメタジウムの崩壊仮説を踏まえて応用すれば行けると想うんですよね」
と、出来立て熱々の白身魚フライをちょっと冷たい感じのするカスタードクリームに浸しながら小張千春は言った。
「もちろん、時空間の隙間を探したり作ったり、そこを通れる大きさの乗り物が必要では――あ、やっぱり甘じょっぱくて美味しい!」
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いやいやいやいや小張さん。そんな簡単に多元宇宙に行けるんだったらタイムパトロール辺りが既に行って…………だよねえ?
『確かに、TPが平行宇宙に行ったと云う記録はありませんが、それはそもそも小張さんの仰る“時空間の隙間”を作る技術がないことや、それらを探し出す確率が天文学的以上に低いことがネックとなって――』
え?小張さんの言ってること合ってるの?
『いえ、合っているかどうかは――少々お待ち下さい…………お待たせ致しました」
……なに?いまの間?
『いえ、ちょっとした計算を。――はい、このMr.Blu‐Oのポッドがあれば、行くことも帰って来ることも可能のようです』
…………へ?
『詳しい説明は省きますが、このポッドに使用されている“見た目よりも中が広い”技術を応用してポッド自体を縮小、“時空間の隙間”に向って進んで行けば――』
いやいやいやいや、だから、その“隙間”が滅多なことでは見付からないんでしょ?
『いえ、ですから、“別の宇宙”のカシヤマ様からのメールを辿れば良いわけです』
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「でも……」と、二つ目のフィッシュカスタードを頬張りつつ木花咲希は呟いた。「わざわざ行かなくてもメールは返せますよね?」
うん。
小張さんも知ってて言ったと想うよ。
(続く)




