第四十一週:自と他(火曜日)
「ツマリぼくタチノ身体ハ、誤差率ヲ減ラスタメニコンナニ大キクナッタッテ事カ?」
と、Mr.Bが博士に訊き返した。
……あ、君も原子の集合体ではあるんだ。
「そうね。原子の大きさは一応、それ以上小さくならない前提だもんね」
と、博士。
「いま問題になっている“抜け穴”や、一般的な時空間移動には、この“原子の大きさ”……と言うか“生命体を維持するための大きさ”が制約として掛かっているワケ」
「アア、」
と、Mr.B
「ソレデ“抜ケ穴”モ、アル大キサ以上ニハナラナイノカ」
*
『葉来は置いておいても良いのでは?』
と、“死者の惑星”で少年が呟き、
『それって、私がイヤなヤツにならない?』
と、宮殿北側で“エル”が返した。
――ま、最初から選択肢には入れてましたけど。
『私のせいにすればよろしいでしょう?』
『うーん?ま、“こっち”のジイさんとはチャンネルが合ってるぽいですしね――』
*
ビビビビビ、ビビビビビビビ。
「止まらないね?」
と、フェテスが言い、
「小さくはなった?」
と、エリシャが続け、
「多分、繋げようとしているんだろうが――」
と、大耳大鼻の男性は応えた。
「いや、居場所を突き止めるのには丁度良いか」
*
「我々の学んでいる武術とは、もう少し“貪欲”なものなのです」
と、いつもの聖人然とした顔を一瞬だけ歪ませながら、ウォン・フェイは言った。
それから――、
「自身の身体だけに囚われていれば“たった100万個”の原子しか扱えない。が、そこに同じ数の原子を持った“他者”が居れば?」
と、今度は左足の踵で地を突き、右掌を空に放ちながら彼は続けた。
「“我々”の精度は数倍することになる」
(続く)




