表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
246/331

第四十一週:自と他(月曜日)

「“動きが鈍る”――確かにその通りです。が、言い方としては……“精度が落ちる”の方が私的にはしっくり来ます」と、フェイ。


 ゆっくりと左足に重心を移し、そこで反射されるベクトルを更に右手先と左腕に分ける。


「100の内の10個――これだけの原子が別の方向に動こうとすれば、それは我々生命体にとって致命的な動きとなるでしょう」


 分散された重力たちがフェイの身体の“最も無理のない経路”を通り右手薬指と左掌中央に集まって行く。


「では若し、これが“100万個の原子の集まり”ではどうでしょうか?」


 と、そう問われたシャーリー・ウェイワードは、ハタと気付くと、


「1,000個になります!」と、少し興奮気味に応えた。


「誤差率は?」


「えっと……0.1%?」


「その通り。これが原子数100個だと?」


「……10%?」


「そうです。100倍の差が出る」


 と、ここまで言ってフェイは、右手薬指と左掌中央に集まった重力を、ついつい放ってしまいそうになったが、それを再び身体中央に戻すよう左足の位置をずらしながら、


「つまり、身体の精度を上げたいのならば、“揺れ動く原子”の数は多い方が良い。これが我々の身体部位を“攻”と“守”、“陰”と“陽”、“強”と“弱”のように分けてはいけない理由なのです――そうして殺気は、どうしてもこれらと…………それに“敵”や“味方”、“勝者”や“敗者”と云ったものまでも創り出してしまいます」


 と、続けた。


 と、彼のこの言葉に、その最後の部分に、少しく引っ掛かりを覚えたシャーリーが、


「あの――」と声を上げた。


「私たちの身体を分けてはいけないとして、何故“敵”と“味方”を分けることもダメなのでしょうか?」



(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ