第四十週:殺気と動機(水曜日)
「それで最後が――」とフェテスが言い、
「“М53”と“М85”だったな?」と、彼に先んじる形で大鼻の男性が言ったので、
「じゃ、これで終わり?」と、例の“カワイイ革靴”を脱いで裸足になったエリシャが訊いた。――もう歩かなくても良い?
「入力はな」と、男性。
「入力?」――まだ歩くの?
「これから“穴”を塞いで、出来れば相手の位置を割り出したい」――前回は塞ぐのに手一杯だったからな。
*
「なるほど。それで“賊”の本拠を襲おうと云うワケですな」と、宮殿科学部の技術顧問は言ったが、
「いや、“襲う”かどうかはまた別の話だよ」と、青い光は否定し返した。「“塞ぐ”だけで収まるならその方が良い」――ここの人たちもジイさんと一緒で血の気が多そうだな。
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「ご覧のとおり、私の目は見えません」と、優しく語り掛けるようにウォン・フェイは言った。
「そして、お気付きかも知れませんが、《騎士の血》も流れてはおりません」
ギイ。
と、ここで部屋の扉が開き、狸寝入りにも飽きたス・イゲイがシャーリー・ウェイワードを伴い入って来た。
「伝えてましたか?」とフェイが訊き、
「いいや」と、イゲイは応えた。「正直、どうでも良いことだ」
件のロン=カイは、すっかり冷え切った顔と身体のまま、そこに立ち尽くしている。
「あ、これは失礼」と、本当に失念していたと云う口調でフェイは言うと、
「汗を拭いて下さい」と、彼に手拭いを渡しつつ、
「そのため、身体能力では、貴方を始めとした騎士の方々には到底勝てません」と続けた。
「が、しかし、“皆さん”の身体を利用して私の技を引き上げることなら可能です」
(続く)




