第四週:チャームとナイフ(月曜日)
フラウスの祖母の家は今も惑星 《ディアン=スウ》にある。
フラウスの母ファウスティナも父コンスタンティウスも年老いた彼女を気遣い帝都近郊に準備した邸宅へ移るよう幾度となく勧めはしたが、この美貌の老婦人は、リバシデとしての誇りか故郷への愛着かは分からないが、彼ら娘夫婦からの善意を断わり続けていた。
*
「それは、その女が怪しいわね」と、そんな老婦人の庭に立つ樫の木のブランコに揺られながらシャーリー・ウェイワードは言った。
「怪しいって――」と、そう言うシャーリーのブランコを押してやりつつフラウスが返した。「“抜け穴”を塞いでくれたんだよ?」
「それが怪しいって言ってるのよ――どうやってやったって?」
「だから、先割れスプーンみたいな――」
「大体、そんな若い女がタイムパトロールのワケないじゃない。きっと、そうやって小さな男の子を連れ去ったりなんかしてるのよ」
「――連れ去られてないよ?」
「今回は運が良かったの――次は必ず二人で行きましょ」
「“穴”は塞がったのに?」
「じゃあまた、どこか別の冒険の時に――」
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「“大丈夫、何も問題はない”――」そう言ってから博士は、グレープフルーツスプーンを口に咥えると、例の四次元内ポケットの中から、今度はエンブレムチャームのような何か (ネコ型5種)を取り出して空に撒いた。
「あれは?」と、彼女の方に身を寄せながらフラウスが訊いた。「――なんですか?」
「携帯型のフォースフィールド発生装置」と、博士。「女性隊員向けにデザインを一新したんだけど誰も使ってくれないのよ」撒かれたチャームが“穴”を取り囲んでいくのが見える。
「――能力も7倍にしたのにね」
(続く)




