第三十八週:フォースとサリュート(木曜日)
「あの少女が賊の片割れだと?」と、皇帝付き宦官のティ・ワフールは訊いた。
――年端も行かぬ小娘ではないか。
するとこの質問に対して『朱南』団長E・C・ヤルドバズは、
「確かに幼い少女ですが当人が自供しており、男のこともよく知っています」と、答える。
――なにより、単身で奥の間近くまで来たのです。
「いずれにせよ、要注意かと」
『あのー、すみません』と、そんな彼らの会話が聞き取れでもしたのだろうか“エル”が言う。
『自供でも自白でも何でもしますから、先ずは葉さんの所に連れてって貰えませんか?』
――変な気を起こしていないかちょっと心配なんですよね?
*
「いやはや、お役に立てず済まない」と、いい加減細身のタキシードに我慢がならなくなって来た中年太り真っ盛りのローベルト・モールトン教授は言った。「我々も迷子になった子供たちを探しているところなんですが……」
――宮殿の方々も慌ただしく出て行かれたまま帰って来ないのですよ。
すると、そう返された青い光は、
「そうか、なら仕方ねえな」と言って再び、勘を頼りに飛び立とうとしたが、
「あ、ちょっと待って下さい」と、こちらはまったく全然タキシードがキツクもカユクもないスリムなアーロン・オクスフッド (♂)の声に呼び止められると、
「なんだい?兄さ……兄さんだよな?」と、二人の方を振り返りつつ言った。
――俺もちょっと急いでんだけど。
「出来ればご一緒させて頂けませんか?」と、アーロン。「実は我々も、迷子になり掛けていまして」
―― 《サカタッティ》の方に会えるなど滅多なことではありませんし。
「ま、それも良いけどよ」と、青い光。「あんたらも面識あんだよな?その皇帝さんに」
(続く)




