第三十七週:ヤンチャとスカウト(月曜日)
「逃げるってなんですか?!」と、ストーン女史が叫び、
「アノ倒レテルおっさんドウスルンダヨ?!」と、Mr.Bも叫んだ。「放ッテ置イタラ銀河ガ危ナインジャナイノカ?」
すると訊かれた博士は、これらの問いには答えずに――と云うか答える前段階として、
「その前に紹介しておくわね」
と、ボックスのフィールド発生変数アルゴリズムをお手製の物に切り替えながら言った。
「こっちのあどけない顔した男の子はフラウスくん。前にウェザーボールの件で私が“この子”に投げ出されたことがあったでしょ?あの時助けて貰った子ね」
――このアルゴリズムならボックスの航跡は中々辿れないと想うけど…………小一時間でも稼げれば良しとしますか。
「で、あっちのちっちゃくてカワイイ美少女が、どっか“別の宇宙”から来た私ね」
――私ってやっぱり美少女よね?
*
『クソッ。逃げ足の速さはソックリですね』
と、“エル”は言い、彼女が手元の石板を操ろうとした瞬間、
「私的的乱雑無章 (スキャッターブレイン)」
と云う静かだがクッキリとした声が廊下内に響き、無数の細くて重い衝撃波が、彼女の身体の輪郭に沿って疾走って行った。
「動くな!」
と、宮廷騎士団『朱南』のロスト・リチャーズが言い、
「次は当てるぞ!」
と、同団員のJ・B・ワイアッドが続けた。
「――当たると死ぬぞ?」
*
「先ず、あの耳の大きな人についてですが」
と、量子計算機のベースを取り換えつつ博士。
「私達が連れて行くのを諦めた瞬間、警報音が止みましたよね?」
――アレで死んでいないのも不思議ですけどね。
「と云うことは、あそこで倒れていて貰うのが正解なんだと想います」
(続く)




