第三十六週:ダイヤモンドと警告音(水曜日)
ビョビョビョビョビョッ。
と、ストーン女史のブレスレットが鳴り響き、その音は露台に急行中のある騎士の一団にも届いていた。
*
「これは何の音だ?」と、宮殿騎士団『朱南』団長E・C・ヤルドバズは言い、
「初めて聴きますが、何かの警告音でしょうか?」と、同副団長J・P・ゼェペリは応えた。「――どうしますか?」
すると、ヤルドバズは、
「ロストにJ・B」と、ゼェペリの後ろに控えていた二人の若い騎士に声を掛けると、「キンとベルを連れて様子を見に行け。多分、奥の間の方だ」と、彼らに指示を出した。「何かあってからでは困る」――露台の方は大分気配が落ち着いているしな。
*
「なによこれ! 警告音マックスじゃない!」と、両手で耳を塞ぎながら博士が言い、
「銀河デモ消エ兼ネナイ勢イダゾ?!」と、あるのかないのかよく分からない耳を、あるのかないのかよく分からない両手で塞ぎながらMr.Bが続けた。なかなか鋭いね。
「ボリューム落として!」と、博士が叫び、
「落とせません!」と、ストーン女史が叫び返した。「とにかく、その人になんらかの処置をしないと!!」
『あー!! もーー!!!』
と、ここで、“警告音に負けてなるものか”と叫び声を上げたのは、結局今週に入ってからまだ一言も発せていない“エル”であった。
『なんで私が何か喋ろうとするたびに邪魔が入るんですか?!』
――いや、それは本当にすみません。
『あと、この音、ほんっとTPって昔っから音とかネーミングのセンスがないわよね!』
――あ、TPともご関係が?
『皇帝業務の一環でね!嫌々だったけど!』
――あーー…………皇帝業務?
(続く)




