第三十六週:ダイヤモンドと警告音(火曜日)
「ちょっと!誰か助けてよ!実際!!」と、フェテスが叫び、
「わた、わた、わたし、誰か大人のひと呼んで来る!」と、自分でもビックリするほど動揺しながらエリシャが応えた。「でも、何処に行けば居るのか分かんない!!」
と、まあ、なんでこの二人がこんなに動揺しているのかと云うと、先々週金曜日のラストで誰かさん達の乗ったタイムボックスが前方不注意運転をしていたおかげで大耳・大鼻の男性が後頭部を強打、血は流していないものの、その場に倒れたまま身動き一つしなくなったからなんですが――これ、タイムパトロール的には大丈夫なんですか?
「どどどど、どどどど、どうしましょう?」と、狼狽感マックスのストーン女史が言い、
「ナンデ“自動ヒラリもーど”ガ機能シテナインダ?」と、こちらも動揺を隠せない感じでMr.B。――なるほど、自動的に障害物を避けてくれるモードがあるんですね。
多分、例の“改造”でボックスにも色々と不具合が出ているんでしょうね。――どうでもいいけど“ヒラリマント”っぽいね。
と、ここで博士が例の氷種黒曜石の瞳をキラリと光らせると、
「よし!じゃあ、乗せちゃいましょう!」
と、顔は冷静だが明らかに平常心を失っているセリフを吐いた。
「本部に連れ帰って、治療して、懇ろにおもてなしして、無かった事にしてもらいましょう」
――狼狽えてるなあ。
あ、でも勝手に動かして良いんですか?
「ソウダヨ、生体ちぇっく」と、Bが言い、
「あ、あ、そうでしたね」と、手首のブレスレットを“生体チェックモード”に変えながらストーン女史が言った――瞬間、
ビョビョビョビョビョッ。
と云う警告音が宮殿廊下内に鳴り響いた。
「ダメです! この人をここから動かすと歴史が大きく変わっちゃいます!!」
(続く)




