第三週:タオルとスプーン(木曜日)
「タイムパトロール?」と、冒険用の肩掛け鞄から真っ赤なタオルを出しつつフラウスが言った。「――はじめて見ました」
「まあ、覚えてないだけかも知れないけどね」と、出されたタオルを受け取りながら博士が返した。「公の任務以外で外部の人と会うときは “レーテー”って云う記憶改変装置を使うことになってるのよ」
――まあ、そのルールを忘れてる隊員も多いけどね。
「……じゃあ、いま話してるのも?」
「私と別れたら忘れるはずよ」と、左手首に着けた紺色のブレスレットを見せながら博士。
「……それが?」
「そう。記憶改変装置と自動翻訳装置と時間転移装置を兼ねた改良版タイムベルト――って云うかタイムブレスレットね」
「すごい!!」
「でしょ?!私が作ったのよ」
「お姉さんが?!ほんとに?」
「そりゃこう見えてもたった10才でTP大学院を…………ごめん。今のもう一回いい?」
「え?……“ほんとに?”?」
「あ、じゃなくて、もうちょっと前のやつ」
「……“すごい!!”?」
「あー、その次のやつ」
「……“お姉さんが?!”?」
「そう!それ!!」と、フラウスににじり寄りながら博士――ちょっと怖いよ、君。
「もうさー、なんかさー、大人の人に交じって仕事してるとさあー、みんながみんな私を子供扱いして来てさー、ま、実際に子供なんだけどー、この前も予算会議で 《眼狗》のおっさんに『このチビ』呼ばわりされてさー、確かに発育は悪いのは認めるけど、もう14才よ?もうちょっとレディとして扱って欲しいワケじゃない、欲しいワケよ!ってことで、私のことは引き続き “お姉さん”でよろしく」
「…………はあ」
「で?――君はどうしてこんなところに?」
(続く)