第三十四週:ボビンと鈍い音(土曜日)
承前。
と、まあ、そんなこんなで、編集部内の連絡体制を問われた坪井西子は、その疑念を払拭すべく、万年締切りに追われる三流小説家カシヤマ・F・ヤスシが編集部宛て一斉送信 (非常識だなあ)で送りつけて来た音声メッセージを再生したのだが、そのメッセージと云うのが……、
『久しぶりだね、ヤ○トの諸君――』と、いきなりツカミを失敗した上、
『さて、今回の君たちの任務だが――』と、引き続き若い編集者置いてけぼりのネタをブッ込んで来た挙句、
『ご、ごめん、やっぱ恥ずかしいから最初からやり直すね――』と、聞いてるこっちが恥ずかしくなるような代物であり (録り直せよ……)、
「なのでこれは、“絶対にカシヤマ先生のメッセージに違いない”と、編集長はじめ歴代担当の方々も口を揃えて仰っていたワケですよ」
と、坪井自身強い確信を持った声で言った。
「あと、後半パートではセク○ラ発言とは認定され難い感じに婉曲されたセ○ハラ発言も飛び出して来ますし……」
*
おいおいおいおい、おいおいおいおい、おーいおいおいおい坪井くん、その言い方じゃまるで僕がセクハ○発言を繰り返している男みたいに聞こえ……え?本人に自覚はないかも知れないけれど、ちょこちょこ女性を性的な目で見ている時がある?――それは仕方ないでしょ?!男なんだから?!
「ちょっとちょっと、樫山さん、落ち着いて」
だってデュさん、この人ヒドイんですよ?まるで僕がセ……え?タイムパトロール?TPがどうしたの?…………編集部に電話して来た?……合コン?合コンの約束?……あっ!あの時の?! (第一部第三十七週)…………ヤバい、すっかり忘れてた。
(続く)




