第三十四週:ボビンと鈍い音(木曜日)
ティケティク・ティケティク。
と、まるで旧型ミシンが鳴るような音がして、大耳・大鼻の筋肉男は、今まさに食べようとしていたフィッシュサンドを皿の上へと戻した。
すると、それを見ていた青い光が、
「どうした?」と、形を人型に戻しながら訊いた。「この前の坊ちゃんたちかい?」
「多分な」と、胸ポケットの辺りから例のラチェットレンチを取り出しながら男性。「何かあった時用に糸目の女の子にボビンを渡しておいたんだが……」――想っていたより早く“何かあった”ようだな。
「場所は?」と、光が訊き、
「ああ、」と、レンチを見ながら男性は応えた。「あんまり行きたくない場所だ」
*
「どう?」と、ナビ=フェテスは訊き、
「多分、」と、シャ=エリシャは応えた。「発信は出来てるみたい」――ただ、なんでコイツはウンともスンとも言わないのよ?
「あのさ」と、フェテス。
「なに?」
「実際のところ、“ボビン”って何?」
分からない言葉や単語が出て来た時は、辞書を引いたり、ネットを検索したりする癖を付けると良いと想うな、うん。
*
「リミッター外れました?」と、博士が訊き、
「想ったより簡単でしたね」と、ストーン女史が答え、
「僕モ手伝ッタシナ」と、Mr.Bが続けた。
すると、
「それで目的の場所と時間は?」と、少し心配そうな声でランダム教授が訊いた……のとほぼ同じタイミングで、
チーンッ。
と、タイムボックスのモニターが鳴って、そこには赤い文字で、
『シオナ、ク=アン、4239』
と、あった。
(続く)




