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第三十四週:ボビンと鈍い音(月曜日)

 さて。


 と云うことで、昔々……と云うか、時空間的には遠い遠い未来 《宇宙の終わりの直前》ぐらいの話なんだけど、物語の時間軸的にはフラウス達より二十年ぐらい後の出来事だったりして、でも、博士とか“黒の少女”とか皇帝に助けを求めに来た少女とかの体感時間的には五年ぐらい前の話でもあって…………って、


 あーもーー!ややこしいなあ!!


     *


※編者注:

 時空間の混乱はタイムトラベルには付き物なのですが、作者自身こんな面倒な話になるとは想ってもいなかったようで彼も混乱しております。どうかご海容下さい。


     *


 えーっと、つまり……ほら!第一部でジアン=ウォが 《ホーライ・カスケード (進化版)》を動かして、宇宙同士を引き寄せ合ったことがあったでしょ?


 その時の話!!


     *


「失礼ながら、君のことは少々調べさせて貰った」と、部屋一面に映し出された様々な『可能性』を見渡しながら、しかし会話の相手には一瞥もくれずに、ジアン=ウォは言った。


「故郷を失くし、親に去られ、幼い弟君も母上が連れて行かれた…………君が『死』を望んでいたとして、誰にそれを責められよう」


     *


 この時、第一部でお見せした『この宇宙のお話』では、大銀河グレーテストオリンピックとかの関係でアイスオブシディアンの故郷である 《地球》は消えていて、そのせいもあって彼女は天涯孤独になっていたんだよね。


 で、ジアン=ウォはそこに付け込もうとしたワケなんだけど、『別の宇宙』には『別の彼ら・彼女ら』も居たワケですよ。


     *


「そこでどうだろう?」と、声質を柔和なものに変えながら、白髪の老人が続けた。


「今、この部屋に映っているのは、有り得たかも知れない君の可能性――『別の宇宙』だ。…………アレなんかは良いぞ?故郷は破壊されず、父上も母上も健在。君は、少し大きくなった弟君と互いのプレゼントを交換している――まさに、夢にまで見たクリスマスの夜だ」


     *


『その夜以来、家には帰れていません』と、呟くように少女が言った。


     *


 で、まあその後、Mr.Blu‐Oとかタイムパトロールとかのナンヤカンヤがあって、ジアン=ウォの計画もナンダカンダスッタモンダした後、『この宇宙のお話』では御破算になったってのは、第一部で見て頂いた通り。


     *


「理屈は簡単だよ。君は、君の選んだ『別の宇宙』へ行く。その後、私があちらの君の魂なり記憶なりをこちらの宇宙に連れて来て、こちらの 《死者の世界》へと送る。すると、こちらの君の身体は持ち主不在となる」


     *


 でももちろん、“可能性の数だけ宇宙はある”のだから、『ジアン=ウォの計画が上手く行った宇宙』だってあるハズだよね?


     *


「持ち主不在の君の身体には陛下の魂が入り、“あの男”との旅を続ける。君はあちらの宇宙で幸福に暮らし、死者と生者のバランスは崩れない。あちらの君には多少気の毒かも知…………そうだな、宇宙を選ぶ時にはその辺も考慮しよう。希死念慮のある君を選ぶとか」


     *


 と云うか、もっと言うと、『身体を乗っ取るまでは上手く行ったけど、その後の展開は上手く行かなかった』みたいな宇宙があったって全然おかしくないハズだよね?


     *


『ああ、でもそうね、同じ人間が何人も居たら混乱するわよね』と“黒の少女”が言った。『じゃ、私のことは“エル”って呼んで』



(続く)

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