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第三十三週:胡蝶乃夢と一陽来復(火曜日)

『飛び降りますか?』


 と、帝都上空に開いた“穴”から顔を出しつつ葉来が訊き、


『ちょっと待って下さいね』


 と、肩に掛けた小型のポーチをガサゴソと探りながら“黒の少女”は応えた。


『皆さんと違ってこっちは普通の身体ですから――』


 すると、


『なんなら担ぎますが?』


 と、来が続け、


『あー、いえいえ、こんな時のために“四次元肩掛けポーチ”を借りて来たので――』


 と、少女は応えた。


『えーっと、“アンチ重力安全装置”!』


『なんですか?その竹トンボみたいなのは』


『“あの人”のお手製道具なんですけど、この先っちょのプロペラが廻ると反重力場が発生して身体を浮かばせるそうで、“空を自由に飛びたい”って云う子供の夢を――』


 うん。このネタはこの辺で止めておこう。


     *


「匿う?」


 と、少女の方に近付くべきか逡巡しながら皇帝は訊いた。


「一体、何から匿うのだね?」


 すると、その風貌からは想いもよらぬほど温和な皇帝の声に安心したのだろうか少女は、


『私の身体を望む人たちからです』


 と、“穴”から這い出しつつ言った。


「身体を望む?」


 と、改めて少女の齢を計りつつ皇帝。


「その者たちはいま何処に?」


『あらゆる所です』


 と、少女。


『ある時は大昔の地球の宮殿に現れ、ある時は大きな洞穴の中に現れ、ある時は――』


 と、ここまで言って少女は、北の空に顔を上げると、そこに自分の知っている蒼い恒星がないものかと、ある種の期待を込めつつ、しばらく眺めていたが、それでもやはり、宙に浮かぶ星や星座が今まで見たこともない星や星座ばかりであることに落胆すると、


『私の知った友ですら、私の知らぬ友となって現るのです』


 ――と、小さく言った。



(続く)

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