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第三十三週:胡蝶乃夢と一陽来復(月曜日)

「“ハッタリ”?」と、フラウスが訊き、


「多分だがな」と、皇帝は返した。「“記憶を消す”技術ならタイムパトロールも持っておるそうだが、彼らは本来躊躇がない」


 ――彼らの痕跡自体消さねばならんしな。


「しかしその男は、お前たちの頭の心配をしておるし、風貌からしてTPの人間ではないのだろう」


 ――それに、《サカタッティ》が彼らと行動を共にするとは想えん。


「であれば多分、《火主》か………… 《時主》の記憶操作術だろうが、アレは術者の脳にも多大な負担が掛かるらしい」


 ――そうだった、それで私も見逃されたんだったな。


「それよりは、お前たちを脅して適当なことを言わせた方が話は早いと踏んだのだろう」


 ――いよいよ持って“あの男”に似ている。


「あちらも逃げる必要があったのだろうし」


 と、ここまで話して皇帝は、露台の片隅に妙な昏い“穴”が出来ていることに気付き、


 と同時に、宙に浮かぶ 《つごもり月》の一部にも、似たような“穴”が出来ていることにも気付いた。


     *


『あら?』


 と、“黒の少女”が言った。


『今度はまた高い所に出ちゃいましたね』


 彼女は今回、前回の戦闘でボロボロになった黒ジャージの代わりに白のブラウスとポリキスオリーブ色のワイドパンツを合せている。


『……ここってランベルトの宮殿ですか?』


     *


『あの――』


 と、露台の片隅から――片隅に出来た“穴”の中から、小さな声が皇帝に話し掛けた。


『かくまって貰えませんか?』


 その突然の声に驚いた皇帝とフラウスがそちらの方へと目を遣ると、そこには小さな――八才か九才ぐらいだろうか?――独りの少女が、怯えた目で彼らを見ていた。


 少女の瞳は、その“穴”の中で氷種黒曜石のように輝き透き通っていた。



(続く)

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