第三十二週:露台と空席(土曜日)
あ、じゃあ、やっぱりここは4261年じゃないんだ?…………2019年?ってことは星団歴だと40……24年?…………ひょっとして、『川崎、生田事件』が起きたのと同じ年?
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「ひょっとしても何も」と、坪井西子が言い、
「それ、今月あった事件ですよ?」と、小張千春が続けた。
すると、このやり取りを傍らで見ていた佐倉八千代が、
「と云うか、坪井さんがここに居るのってカシヤマさんの指示と云うかアイディアじゃないんですか?」と訊いたので、それに続ける形で木花咲希が、
「正直“なんで座談会なんか?”って想いましたけど――」と言った。「作風が作風だからって流してましたけど――」
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え?作風……って、僕の小説読んでくれてるんですか?!――いやあ、嬉しいなあ、こんな過去にも僕のファン?愛読者?がいるなんてちょっとビックリですよ。ドレ読みました?女の子だし『千駄ヶ谷の中心で愛を叫ぶ』とかかな?アレってタイムパトロールの中にもファンクラブがあるほどの…………違う?あ、じゃあ、木花さんは男前のところもあるし、『銀河漂流ウラ…………それも違う?
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「いや、ですから、ヤッチが坪井さんから借りた二冊だけですって」と、咲希。「そんな未来の小説、普通は読めないですよね?」
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……なんで坪井くんが八千代くんに僕の小説を貸したの?…………座談会?この三人を呼んで?……うん?……最初は二人だったけど八千代くんのお伴で木花さんも来た?……誰がそんな企画を?…………僕?僕はお話書くのに必死でそんな企画考えたりしないよ?
(続く)




