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第三十週:帝と蛇と死刑囚(木曜日)

 土手は脆い泥岩で、崩れやすく至る所に穴が空いていた。


 ルディは恐る恐ると、しかし、前を行く“彼女”に置いて行かれない程度の速度で、土手をズルズルと滑り降りて行った。


 土手の半ば辺りにまで来たところで、一瞬、チラ。と、“彼女”がルディの方を振り返った――ような気がした。


『多分、瞳の色は緑だ』と彼は想い、次の瞬間、蛇は速度を上げ、アッ。と言う間もなく、土手の下へと辿り付き、それからスルスルと一番手近の洞穴の中へと入って行った。


『待ってくれ!』と、ルディが想ったかどうかは不明だが――いや、多分に彼のことだから、来た道を戻るよりは、


『降り切った方が早い』と想ったのだろう。“彼女”の消えた洞穴を確かめると、そのままズルズルと、滑り落ちる速度を少し上げた。


     *


「びっくりするほど大きな洞穴だった」と、その日の日記を閉じながらルディは言った。「でも、本当に奇妙なのはここからなんだ」


     *


 恒星の光を借りてルディが穴の中を覗くと、そこには先ほどの蛇が頭と体を二つに分けて横たわっていた。


『剣?』と、一瞬彼は想ったが、直ぐに「ソニックブレード?」と、いつかの学校で見せられた記録映像を想い出しながら呟いた。


 白く輝いていた“彼女”の鱗は色を失くし、辺り一面には朱色の血が飛び散っている。


 シクシクシク。と、茫然自失の彼の耳に幼い女の子の哭き声が聞えた。


「何を哭いているの?」とルディが訊くと、


『私のせいでヘビが殺されたの』と、女の子は答えた。『朱い人たちから守ってくれたの』


 と直後、ブ、グ、シュ。と云う奇妙な音がして彼女の周りに“穴”が現れ――と、彼が想った瞬間、彼女の姿は消えてしまっていた。



(続く)

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