第三十週:帝と蛇と死刑囚(水曜日)
ルディ=ゲルドフが少年期を過ごした惑星 《カドー》は、ほんの数世代前まで、そのほとんどが荒れた大地であった。
その頃ルディは14才かそこらで、出来立てほやほやと言って良い開拓地に住んでいた。
14才かそこらの彼は、未だ薬物には手を出していなかったが、友人はもちろん兄弟姉妹もなく、彼はよく町を抜け出しては、ヒューマノイドが分け入っても問題のない範囲の荒地を散策・探検したものだった。
ゴオオ。と云う水の流れる音が聞こえた。
ルディの住む町の近くには、細いが雨が降れば激流へと変貌する小さな川が流れていた。
「あの川に近付いてはいけない」と、町の大人たちは町の子どもたちによく言って聞かせていて、この大人たちの言葉を想い出したルディはその日、一も二もなく、その音の鳴る方へと向って歩き出した。
川の土手は高く、おまけに土の層が薄いため、そこいら中に岩が飛び出していた。
川に向う途中、ひと際大きな岩の上に、ひと際大きな蛇がいることにルディは気付いた。
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「ありゃ二分の一クラディオンはあったな」と、その日の日記を読み返しながらルディは言った。「ま、それよりも何よりも驚いたのは、あの体の色だけどな」
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昨日までの雨模様とは打って変わった青空に二つの恒星が浮かび、大蛇の体を輝かせる。
「真っ白で、でも銀色だった」と、ルディは“彼女”から目を離せなくなっていた。「神様が本当にいるんなら、ああ云う生き物ばかりをお創りになれば良かったんだよ」
しばらくすると“彼女”は、ルディの視線にも飽きたのだろうか、岩だらけの土手をスルスルと、川の方へと降りて行った。
彼女の鱗は光り輝いていて、まるで銀白色の鎧のようであった。
(続く)




