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第三十週:帝と蛇と死刑囚(火曜日)

「ただいま確認致しましたところ、尹晟殿は宮中には居られませぬようで御座います」と、近侍の宦官は皇帝に伝え、


「では、捜してこちらに連れて来るように」と、皇帝は指示を出した。


 それから程なくして、息を切らせた尹晟が皇帝の前に現れた。


「なにやら急の御用とのこと。一体、どうなされたのでしょうか?」


「いや、実はそれがな――」


 と、皇帝は昨夜の夢の話をし掛けたのだが、これではあまりに突拍子がなさ過ぎる。


 仕方がないので皇帝は、昨夜の夢の話も夢で会った不思議な童女の話も誰にも語らぬまま、尹晟が童女を連れて行かぬよう一日中あれこれと彼に用事を言い付けた。


 そうして、夜になり掛けた頃、大臣に言い付ける雑用もなくなり掛けた頃、『このままではまずい』と想った皇帝は尹晟に、


「どうじゃ?久しぶりに象戯でも?」と言った。


 そうして、彼らの勝負は延々と続き、暗闇が皇宮に足を踏み入れる頃になると、雑事の疲れもあったのだろうか、尹晟は 《傌》の駒を持ったまま、眠りに入ってしまった。


     *


 ブ、グォ、シュ。


     *


 雷鳴が大地を揺るがし、奇妙な音が欽安殿を襲った。すると程なくして二人の衛兵が皇帝の下へと訪れた。


「どうした?血相を変えて」と、皇帝が訊くと、衛兵のうちの一人が、


「尹晟殿が――」と不思議な声で言った。「小さな童女を連れ宙へと消えて行きました」


「何を言うておる。尹晟ならそこにおるわ」と、皇帝が言うが早いか尹晟は目を覚ますと、


「いやはや奇妙な夢を見た」と言った。「私が幼い童女を連れ、宙へと消えて行くのです」



(続く)

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